
新連載:ステーブルコイン最前線
先日、国内初のステーブルコイン(円建ては世界初)の「JPYC」が金融庁に承認されました。JPYC社によると、2025年秋に発行予定とのことです(参考:日本初の円建てステーブルコイン発行へ、JPYCが資金移動業の登録報告)。
国内での初承認を受け、今注目トピックスであるステーブルコイン。本連載では、今後ステーブルコインに関する最新トピクックスや、初心者向けに学べるコンテンツを掲載していきます。第1回の本記事は、今話題の「JPYC」についての簡単な概要と、あまりメディアでは報じされていない「金融検閲」に関して紹介いたします。

そもそもテーブルコインとは?
ステーブルコインとは、安定した価値を維持するよう設計されたブロックチェーンを用いたデジタル通貨です。日本法においては、「電子決済手段」という枠組みで実現可能です*1。よく混同されますが、電子決済手段はビットコイン等の「暗号資産」ではありません*2。
JPYCとは?
スタートアップ企業のJPYCが発行予定の電子決済手段(以下、「ステーブルコイン」といいます。正確には「日本法に基づき発行されるステーブルコイン」というべきですが、長いため省略します)です。世界3位のシェアを持つ日本円における世界初のステーブルコインということで、世界中から注目されています。
ステーブルコインによって世の中はどう変わるのか?
ステーブルコインは、これまでのどの決済とも異なる性質の決済手段であり、これが起こす変化は多岐にわたります。今回はそのうち「金融検閲の突破」という内容を取り上げます。
金融検閲とは?
金融検閲(「金融的検閲」とも)は、金融機関や決済代行会社(以下「決済代行業者」)による加盟店への恣意的な取引妨害です。
金融的検閲(きんゆうてきけんえつ、Financial Censorship)は、金融機関や決済代行会社が、アカウントを閉鎖したり取引を妨害したりすることによって、オンライン上の表現の自由に不利な影響を与えること。プラットフォーム、広告代理店、クレジットカード会社が主体となっているとされる。Wikpedia – 金融的検閲
海外ではPornhub、日本ではDMMやPixiv 等が影響を受けています。
参考:クレジットカード会社の“金融検閲”でアダルトゲーム大量削除。圧力をかけた団体は日本のJCBも名指し(Yahooニュース)
小規模な事業者の中には、事業を閉鎖に追い込まれたところもあります。
とある弁護士は、「アダルト業界の敵は警察や当局ではない。真の敵はクレジットカード会社だ」と断言しているほどです。
規制されて当然?
「アダルト商材を扱っているのだから、規制されて当然だ。今までお目溢しされていただけ」と考える人もいます。
この考えには大きな問題点があります。規制がアダルトに留まる保証はどこにもないからです。決済代行業者の所在地を管轄する裁判所が、他の領域も規制するような判決・命令を出す可能性もあるし、決済代行業者が自主的に規制を行う可能性もあるからです。
例えば、決済代行業者がアメリカにある場合で、アメリカの戦争責任を問う商材を扱った場合、「保護するに値しない表現」とみなされ決済が禁止される可能性は十分あります。X,Google,Facebook 等は「恣意的に情報を掲載ないし削除している」と「検閲」を長く批判されています。「検閲」が現実に起こっているのになぜ「金融検閲」は起きないと言えるのでしょうか?
ステーブルコインは金融検閲への有力な対抗策
JPYC代表の岡部典孝氏は、JPYCで金融検閲に対抗できると述べています。
電子決済手段は不特定多数の(加盟店ではない)店舗などで決済に使用することができます。
金融検閲やDebankingの対策としてはこれ以上ない方法だと思います。
— 岡部典孝 JPYC代表取締役 (@noritaka_okabe) May 28, 2025
ステーブルコイン(電子決済手段)には、「加盟店」という概念はありません。クレジットカードやポイントのように、運営・発行している会社に承認を得る必要が無いのです。したがって、審査段階での圧力を受けることは無くなります。
何より海外からの圧力や影響を受けないという大きな強みもあります。アダルトでも思想が関係するものでも、日本法に準拠している限り、決済が使えなくなることは一切ありません。日本は世界一表現の自由が保証されているといっても過言ではありません。将来的には、海外企業が規制を回避する為に、JPYC決済を導入する可能性もあります*3。
JPYCは日本の決済の未来を切り開いていく あたらしい経済 のツールと言えるでしょう。
【脚注】
*1 ステーブルコインはいくつか種類があるため、「ステーブルコイン」=「電子決済手段」ではなく、「ステーブルコイン」∋「電子決済手段」です。正確に述べると、「日本法に基づき発行されるステーブルコイン」=「電子決済手段」です。
*2 「日本法に基づき発行されるステーブルコイン」は「暗号資産」ではありませんが、他のステーブルコインは暗号資産であることが多いです。
*3 現在は日本のマイナンバーカードがなければ償還(円に戻す)ことができませんが、ブロックチェーンの性質を活かしてDEXによる暗号資産との交換は可能なので、手数料はかかりますが海外企業でも換金はできます。
著者紹介
「ステーブルコイン最前線」は、AltPay株式会社 代表取締役社長 である私、小宮自由が連載させていただきます。なおAltPay株式会社では、ステーブルコインとブロックチェーンのノウハウを活かし、JPYCを導入したい企業への支援をしています。ご興味ある方は、是非ともお問い合わせください。
→ AltPay株式会社 公式X













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