今週もSBI VCトレード提供の暗号資産(仮想通貨)に関するウィークリー・マーケットレポートをお届けします。
9/21~9/27週のサマリー
- 先物市場で20~30億ドル規模の清算
- トランプ大統領がウクライナ寄り発言、投資家の資金はゴールドへシフト
- オプションプレミアム収益を狙うETF申請が相次ぎ発表
暗号資産市場概況
9/21~9/27週におけるBTC ($107,835.00)/JPYの週足終値は前週比▲4.51%の16,380,000円、ETH ($3,947.41)/JPYの週足終値は同▲9.71%の600,655円であった(※終値は9/27の当社現物EOD[9/28 6:59:59]レートMid値)。
先週の暗号資産市場は、FOMC後の調整局面が一段と鮮明となり、先物市場では清算を伴う低レバレッジ化が進行した。週初から木曜にかけて30億ドルから40億ドル規模に達する大規模な清算が発生し、そのうちBTCは約7億ドル相当が対象となった。価格面でも22日に111,800ドル、さらに26日には108,600ドル台まで下落しており、短期間で複数回の節目割れを確認する展開となった。現物市場でもこの脆弱性が顕在化し、特に26日における現物売りは9月5日以降最大となる1億7,000万ドルを超えた。
米国現物ETFでは資本流出が顕著となった。BTCは▲9億2,500万ドルの純流出となり、水曜日の2.4億ドルの流入を木・金曜日の大幅流出が打ち消した。ETHも▲7億9,556万ドルの純流出を記録し、26日には一時3,825ドルまで急落。BTCの米国現物ETFは24日を除く4日間すべてで流出となっており、現物の売り圧力を強めたと考えられる。実際に長期保有者による利益確定は安定的に進んでおり、一週間で約3万BTC、2024年3月から通算で345万BTCに到達、投資家層の成熟度と資本ローテーションの規模を浮き彫りにしている。
マクロ環境では、米PCEインフレ率が市場の予想通りの結果となり株式を一時押し上げたものの、BTC相場の下支えには至らなかった。地政学面では米トランプ大統領がウクライナ寄りの発言を行うなど姿勢転換が見られ、投資家がディフェンシブ資産へ資金を移す動きが強まった結果、ゴールドは23日に過去最高値となる3,790ドルを突破し、週単位ではBTCを上回るパフォーマンスを示した。ステーブルコイン時価総額は先週比+1.2%の約2,885億ドルに増加しており、市場に待機資金が依然として厚く存在していることが確認される。
オプション市場では、先物急落を受けてIV(インプライド・ボラティリティ)が再燃し、スキューも一週間物で10%以上の動きが幾度か確認された。こうした現象は下落ヘッジ需要に加え、ボラティリティそのものを収益化しようとする投資家の動きが強まっていることを示唆している。実際、こうした環境下では収益性追求型商品の注目度が高まった。具体的にはBTCオプションプレミアムにおける収益獲得を戦略とするETFの申請が行われた。これらの内容はカバードコール戦略を用いてプレミアム収益を狙い、収益を分配する構造を目指しているものである。
今週の暗号資産市場は、米雇用統計とISM景況感など主要指標が金利見通しを左右し、相場の方向を決める重要局面となる。機関投資家や長期保有者からの需要の方向性がかみ合わない限り、市場構造が一段と疲弊するリスクが残る。したがって、各フローの動向やETF資金の推移、さらにはオプション市場のポジション動向にも引き続き注意を払う必要があるだろう。
1) BTC/USD週間チャート(30分足)

2) BTC/JPY週間チャート(30分足)

3)ビットコイン現物ETFの資金流入出と運用資産残高合計、ビットコイン価格

4)イーサリアム現物 ETF の資金流入出と運用資産残高合計、イーサリアム価格

9/21~9/27週の主な出来事
9/28~10/4週の主な予定
【今週のひとこと】 デリバティブ市場におけるステーブルコインの担保利用開始
2025年7月に米国発のステーブルコインを規制する法律であるGENIUS法では、準備資産の保有義務などが盛り込まれており、ステーブルコインは透明性のある安全な金融商品として位置づけられたと考えられます。そして、CFTC(米商品先物取引委員会)は2025年9月23日に資本効率の向上と担保管理の近代化を目的とした、デリバティブ市場におけるステーブルコインを含むトークン化された担保の利用に向けた取り組みを開始しました。
CFTC(米商品先物取引委員会)のキャロライン・D・ファム委員長代理は「1月以降、CFTCはアメリカの暗号通貨の黄金時代を導くための明確な行動をとってきた」、「担保管理こそが市場におけるステーブルコインの『キラーアプリ』(普及を加速させる目玉となる存在)だ」、「責任あるイノベーションの最先端を推進し、業界と連携していく」といくつかのコメントを残しており、ステーブルコインとそれに類するテクノロジーに期待を寄せています。
また、市場関係者の反応も好意的なものが多く、USDC ($1.00)を発行するCircle社のヒース・ターバート氏は「USDCのような信頼できるステーブルコインを担保として利用することで、コストとリスクが低減し、グローバル市場全体で24時間365日、流動性が確保されるだろう」とコメント。昨年末にRLUSD ($1.00)をローンチしたリップル社のステーブルコイン担当SVP、ジャック・マクドナルド氏は「トークン化された担保がデリバティブ市場の『効率性と透明性』を高め、金融イノベーションにおける米国のリーダーシップを強化できると考えている」とコメントを残しています。
今後 、CFTC(米商品先物取引委員会)は10月20日までに一般の方のコメントを募集し、市場関係者の意見を求めています。
アメリカでは法律を整備して暗号資産の新たな取り組みや活用が模索されており、今後の暗号資産市場の発展や、それに伴う暗号資産の取引の活性化が期待でき、今後もステーブルコインを中心とした動向に注目していく必要があるのではないでしょうか。
このレポートについて
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暗号資産は、移転記録の仕組みの破綻によりその価値が失われる可能性があります。
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