
株式トークン販売の規制緩和を取引所団体がリスク指摘
米証券取引委員会(SEC)が、暗号資産(仮想通貨)企業に対し「トークン化株式」の販売に関する規制緩和を認める可能性のある計画は、投資家に損害を与える恐れがあると、世界の取引所団体が今週、米規制当局に宛てた書簡で指摘した。
複数の暗号資産企業は、上場株式に連動するトークンを、株式を直接保有せずに株式へのエクスポージャーを得たい個人投資家向けに販売する計画だ。しかし、米国でこれらの商品を販売するには、ブローカーディーラー(証券業者)として登録していない暗号資産企業が、SECからノーアクションレター(no-action letter)または適用除外(免除)を得る必要がある。
SECのポール・アトキンス(Paul Atkins)委員長は、暗号資産事業者が新たなビジネスモデルを試せるよう、有価証券法の枠組みに「イノベーション免除(innovation exemption)」を設計していると述べている。
米ナスダック(Nasdaq)やドイツ取引所(Deutsche Boerse)などが加盟先する業界団体「世界取引所連盟(WFE)」は、11月21日付の書簡で、こうした免除は市場の公正性リスクを生み、投資家保護を損なう可能性があると指摘した。
WFEのナンディニ・スクマー(Nandini Sukumar)CEOは「SECは、何十年にもわたり市場を守ってきた規制原則を回避しようとする企業に、免除を与えるべきではない」とロイター(Reuters)に語った。
WFEの書簡をサイトに公開したSECは、コメントを控えた。
暗号資産に対するSECの新しいアプローチ
WFEは8月、トークン化株式を提供するプラットフォームに警戒感を示していたが、今回の書簡では、救済措置を求めている具体的な企業名や、どの規則からの救済を求めているのかは挙げてられていない。
株式をトークン化するには通常、既存の株式にペッグされたトークンを作成する必要がある。
ドナルド・トランプ(Donald Trump)大統領の下で、SECは暗号資産への対応方針を大きく見直した。ロビー活動の主要勢力へと台頭した新興産業にとっては勝利だといえる。
銀行を含む広範な金融業界も、暗号資産関連の商品・サービスを自社事業に取り込む方策を模索している。
WFEは書簡で、自らを「イノベーション推進(pro-innovation)」と位置づけ、トークン化を「資本市場における自然な進化」と表現した。
それでも、この書簡は、主流の金融業界が暗号資産業界の要望の一部に対して反発し始めた兆しでもある。暗号資産業界の一部が、自らの事業と直接競合し始めているためだ。
WFEのテクノロジー・ワーキンググループを率いるジェームズ・オーリフ(James Auliffe)氏は「私たちと暗号資産プラットフォームは同じ土俵で競争すべきであり、同じルールの適用を受けるべきだ」と述べた。
トークン化株式の発行企業は、暗号資産の基盤技術であるブロックチェーンを株式市場に統合すれば、取引がより効率化し得ると主張する。
一方でオーリフ氏は、株式取引をブロックチェーンへ移すことによる利点がコストを上回る場面を、取引所側はいまだ模索していると述べた。「誰もそれを実現していない事実が示しているのは、とりわけ株式市場は、すでに非常に、非常に効率的だということだ」と語った。
※この記事は「あたらしい経済」がロイターからライセンスを受けて編集加筆したものです。
SEC must not let crypto companies ‘bypass’ rules, stock exchanges say
(Reporting by Elizabeth Howcroft in Paris and Hannah Lang in New York; Editing by Tommy Reggiori Wilkes and Emelia Sithole-Matarise)
参考:SEC・SEC2
翻訳:大津賀新也(あたらしい経済)
画像:Reuters
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