今週もSBI VCトレード提供の暗号資産(仮想通貨)に関するウィークリー・マーケットレポートをお届けします。
7/20~7/26週のサマリー
- 英財務長官、50億ポンド相当のBTC ($106,663.00)売却を検討
- 日米が貿易協議で合意
- ゴールドマン・サックスとBNYメロンがトークン化MMFをローンチ
- Galaxy Digital、約80,000BTCの売却を顧客の代理で執行
暗号資産市場概況
7/20~7/26週におけるBTC/JPYの週足終値は前週比▲0.64%の17,419,600円、ETH ($3,853.29)/JPYの週足終値は同+4.28%の554,715円であった(※終値は7/27の当社現物EOD[7/27 6:59:59]レートMid値)。
先週の暗号資産市場は、米国株式市場の史上最高値更新に追随できず、英国財務相によるビットコインの大規模売却報道や長期保有のビットコイン移動といった不安を感じらせる材料が重なって上値の重い一週間となった。一方、上場企業による暗号資産を活用した財務戦略の採用拡大や、暗号資産関連企業の本格的な事業展開が相場の下支え要因となり、下落幅は限定的なものとなった。
現物ETFではビットコインおよびイーサリアムはいずれも純流入を記録したが、流入額においてはイーサリアムが18億ドルと、ビットコインの7,200万ドルを大きく上回った。
特にイーサリアム現物ETFは、5月中旬以降、週次ベースで純流入が継続している(詳細は本稿添付のETFフロー・チャートを参照されたい)。この背景には、米国で「GENIUS法案」が成立し、同法の要件を満たす主要ステーブルコインであるUSDC ($1.00)の60%以上がイーサリアム・ネットワーク上で発行されていることによる手数料収入増加期待、およびこれに伴う企業の財務戦略へのイーサリアム採用事例の増加がある。
ビットコインは、20日未明に英国財務相が50億ポンド相当のビットコインを売却するとの報道を受け、米株先物市場のオープンと共に116,500ドル台まで下落し週明けを迎えた。さらに、約14年ぶりに移動した80,000BTCの存在が市場の下押し圧力となった。一方で、週内高値は23日の水曜日に120,300ドルを付けたが、日米の貿易協議が15%で合意されたことを受け、他国との協議もこれに準じた内容に落ち着くとの期待がポジティブ材料となった
その後、金曜日には週内安値となる114,750ドルを記録。これは、移動が確認されていた80,000BTCがGalaxy Digitalによって売却されているとの観測が市場に広がったことが要因となった。翌日の土曜未明にGalaxy Digitalがすべての売却を完了したと発表すると、ビットコインは117,000ドル台まで反発し、週末を迎えた。
米Wall Street Journalによると、米国株価指数のS&P500とNASDAQは7月に入り、それぞれ9回、13回と史上最高値を更新している。その反面、ビットコイン価格は週次で下落しており、株式市場との乖離が見られる。これは、足元の株高要因が国境をまたぐ通商対立の緩和や景気減速を意識する利下げ観測に影響されているのに対し、暗号資産は政策的進展が主な価格形成要因となっているためと考えられる(前述したETHの価格上昇理由とも同様)。さらに、時価総額で世界1位および3位のステーブルコイン発行体TetherとEthena Labsが米国での事業展開を本格化させており、ベッセント米財務長官もステーブルコイン市場が将来的に2兆ドル規模(現在の約8倍)に達する可能性を言及している。今後のステーブルコイン市場の動向に注目が集まる。
今週は日本と米国の政策金利発表が予定されており、それに先立ち米国の第二四半期GDPやADP非農業部門雇用者数など、重要経済指標の発表が控えている。外国為替レートに影響を受ける円建てビットコインの投資家にとって、日々のマクロ・ニュースに注視した投資が求められる局面だ。
1) BTC/USD週間チャート(30分足)

2) BTC/JPY週間チャート(30分足)

3) ビットコイン現物 ETF の資金流入出と運用資産残高合計、ビットコイン価格

4) イーサリアム現物 ETF の資金流入出と運用資産残高合計、イーサリアム価格

7/20~7/26週の主な出来事
7/27~8/2週の主な予定
【今週のひとこと】SharpLink Gaming,inc.
7月24日(米国時間)、ブラックロックでデジタル資産戦略を統括していたジョセフ・チャロム氏が、SharpLink Gaming(ナスダック:SBET)の共同CEOに就任したことが報じられ、市場関係者の注目を集めました。チャロム氏は、ブラックロックにおいてビットコイン現物ETF(IBIT)やトークン化MMF(BUIDL ($1.00))の開発を手がけてきた実績を持ち、伝統的な金融業界と暗号資産分野の架け橋として知られる人物です。
では、チャロム氏が経営を担うこととなったSharpLinkとは、いったいどのような企業なのでしょうか。SharpLinkはもともと、スポーツベッティングなどの事業者向けに、アフィリエイト型のマーケティングプラットフォーム(PAS.net)を提供する、ナスダックの上場企業でした。そうした中、2025年5月にイーサ(ETH)を主な準備資産とする「デジタル資産トレジャリー戦略」を開始したことが転機となり、同社の存在感が急速に高まりました。
現在SharpLinkは、約36万ETH(およそ13.3億ドル相当)を保有しており、上場企業としては世界有数のETH保有企業となっています(2025年7月27日時点ではBitMine社に次ぐ世界第2位)。この背景には、イーサリアム共同創設者であり、技術開発企業ConsenSysのCEOを務めるジョセフ・ルービン氏が会長として関与していることも影響していると考えられます。
暗号資産を活用した財務戦略としては、マイケル・セイラー氏が率いるStrategy(旧MicroStrategy)社によるビットコイン集中型のトレジャリーモデルが広く知られていますが、SharpLinkの方針はそれとは異なります。同社はETHを単に保有するだけでなく、ステーキングや再ステーキング、さらにDeFi(分散型金融)を通じた利回り獲得を重視した運用モデルを採用しています。この戦略が市場から評価され、2025年には同社株が一時、前月比で約922%上昇する場面も見られました。
現在のSharpLinkは、ルービン氏とチャロム氏という、暗号資産と伝統金融の双方に精通した経営陣を擁し、「ETHを軸とした資産成長モデル」の実現を目指す意欲的な企業へと変貌を遂げています。一方で、現時点では売上規模が限定的であり、また暗号資産価格の変動による影響も大きいため、同企業への投資判断にあたっては十分な注意と見極めが必要です。
このレポートについて
国内の暗号資産(仮想通貨)取引所「SBI VCトレード」提供の週間マーケットレポートです。毎週月曜日に最新のレポートをお届けします。
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<暗号資産を利用する際の注意点>
暗号資産は、日本円、ドルなどの「法定通貨」とは異なり、国等によりその価値が保証されているものではありません。
暗号資産は、価格変動により損失が生じる可能性があります。
暗号資産は、移転記録の仕組みの破綻によりその価値が失われる可能性があります。
当社が倒産した場合には、預託された金銭及び暗号資産を返還することができない可能性があります。
当社の取り扱う暗号資産のお取引にあたっては、その他にも注意を要する点があります。お取引を始めるに際しては、「取引約款」、「契約締結前交付書面」等をよくお読みのうえ、取引内容や仕組み、リスク等を十分にご理解いただきご自身の判断にてお取引くださるようお願いいたします。
秘密鍵を失った場合、保有する暗号資産を利用することができず、その価値を失う可能性があります。
暗号資産は支払いを受ける者の同意がある場合に限り、代価の支払いのために使用することができます。