トークン化ドル決済への関心高まる

米金融大手シティグループの投資部門「シティ・ベンチャーズ（Citi Ventures）」が、企業向けステーブルコイン基盤を提供するBVNKへの戦略的出資を10月9日に発表した。

なお具体的な投資額は発表されていない。

この動きは、主要銀行がトークン化されたドルを決済・清算に活用する関心の高まりを受けてのことだという。

BVNKは、本社を英ロンドンに置く、ステーブルコインを基盤とするインフラ構築を手がけるフィンテック企業だ。グローバルな送金・決済・資金移動をリアルタイムで実現し、大手銀行との提携や各国でライセンスを取得している。

同社のプラットフォームは年間200億ドル以上を処理しており、ワールドペイ（Worldpay）、フライワイヤ（Flywire）、ディーローカル（dLocal）などの顧客向けステーブルコインサービスを支えているという。

同社のプラットフォームは、送金、決済、資金移動などの領域で、企業がステーブルコインを安全かつ規制準拠の形で活用できるよう設計されているとのことだ。

また、BVNKは、これまでにビザ（Visa）、ハウン・ベンチャーズ（Haun Ventures）、タイガー・グローバル（Tiger Global）などからも出資を受けている。

BVNKの共同創業者兼CEO、ジェシー・ヘムソン＝ストラザーズ（Jesse Hemson-Struthers）氏は、「今回の投資は、私たちのお金のグローバルな移動を加速させるというミッションをさらに後押しするものだ。
当社のプラットフォームは、企業がステーブルコインを活用して国境を越えた送金を迅速に行い、新たな金融サービスを立ち上げることを可能にする」とコメントしている。

また、シティ・ベンチャーズの責任者であるアルヴィンド・プルショタム（Arvind Purushotham）氏は、BVNKへの出資理由として、ステーブルコインの決済利用の急激な拡大を挙げ、「BVNKのエンタープライズ向けインフラと実績は非常に印象的であり、今後の市場成長を支える重要なプレイヤーになると見ている」とコメントしている。

今回の出資は、各国でステーブルコイン規制の明確化が進むタイミングで行われた。

米国では7月に、銀行によるステーブルコイン発行を認める枠組み「GENIUS法」が成立。大手金融機関による規制対象ステーブルコイン事業への進出が着実に拡大している。財務省は現在、規則適用方法に関するパブリックコメント（意見募集）を行なっており、実施に向けた準備を進めている。

コインベースとマスターカードも買収協議か

一方で、コインベース（Coinbase） および決済大手 マスターカード（Mastercard） が、BVNKの買収をめぐり高度な協議を行っていることが報じられている。この件に詳しい関係者の話として「米フォーチュン誌（Fortune）」 が10月9日報じた。

最終的な合意には至っていないものの、複数の情報筋によれば、潜在的な売却価格は15億〜25億ドルの範囲で検討されているという。なお、交渉は決裂する可能性もあるが、現時点ではコインベースがマスターカードより優位に立っているとのことだ。

仮に成立すれば、この買収はステーブルコイン関連として過去最大規模となる見通しだ。

参考：発表・フォーチュン誌
画像：Reuters

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