消費者保護と規制調和を強化へ

米上院農業委員会が、デジタル資産市場の構造を見直す法案の討議草案を11月10日に発表した。なお同案は、共和党のジョン・ブーズマン（John Boozman）委員長と民主党のコリー・ブッカー（Cory Booker）上院議員によって同日に公開されたものだ。

この超党派の討議草案には、同委員会が所管する米商品先物取引委員会（CFTC）に、デジタル・コモディティ（digital commodities）の現物取引を監督する新たな権限を付与する構想を含むもので、長らく議論されてきた「暗号資産規制の明確化」に向けた重要な一歩と位置づけられている。

草案では、CFTCが現物のデジタル資産市場を規制するための包括的な枠組みが提案されており、同時に個人投資家を含む消費者保護の強化にも重点が置かれている。顧客資金の分別管理、利益相反の防止、取引情報の開示義務などを通じて、より安全で透明性の高い市場環境を整備する方針だ。

さらに、CFTCと米証券取引委員会（SEC）の協調的なルール策定を促す仕組みも盛り込まれており、これまで分断されてきた商品・証券両領域の規制の橋渡しを図る狙いがある。そのうえで、自己保管（セルフカストディ）などの新たな技術革新に対応できる柔軟な制度設計と、CFTCがそれを運用できるだけの人員・資金体制の拡充にも踏み込んでいる。

草案にはすでに多くの検討済み項目が含まれている一方で、いくつかの条項には、未確定部分の課題も残されており、今後の議論で修正・補強される見通しだ。上院議員らは、関係者からのフィードバックを幅広く求めている。

ブーズマン議長は声明で「CFTCは現物デジタル資産取引を規制する適切な機関であり、新興の暗号資産市場に明確なルールを設け、消費者を保護することが不可欠だ」と強調。そのうえで、議会および政権と連携の上、CFTCがこの新たな権限を初日から効果的に遂行できるように人員と資源の確保に努めると述べた。

ブッカー議員は、「今回の討議草案はあくまで第一歩であり、委員会で採決に進むまで、そして最終的に上院本会議に提出するまでには、まだ多くの課題に取り組む必要がある」とコメント。

さらに、「現在のCFTCには十分なリソースがなく、また超党派の委員構成も整っていないことを懸念している。こうした状況では、規制の抜け穴を防ぎきれない。加えて、公職者による汚職が続くなかで、議会がそうした不正を防ぐための適切なガードレールを設けているのかを検証する必要がある」と指摘した。

そのうえで「これらの課題に対処するため、同僚議員や関係者が力を合わせることを強く求める」と呼びかけた。

CFTCは通常5名の委員構成で設計されているが、現状は空席が多く、キャロライン・ファム（Caroline Pham）委員が暫定的に委員長職を務めている。ファム氏は現在、複数の規制対象取引所と協議を行い、個人向けの現物暗号資産商品の導入に向けた議論を進めていると報じらている。

トランプ政権は、証券取引委員会（SEC）の暗号資産規制担当者であるマイク・セリグ（Mike Selig）氏をCFTCの常勤委員長として指名する方針だが、正式な承認はまだ行われていない。ホワイトハウスはセリグ氏と共にCFTCに加わる共和党・民主党の両党人選を検討中とされている。

参考：発表
画像：PIXTA

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