
米控訴裁がSBFの控訴主張に懐疑的
米連邦控訴裁判所は11月4日、2022年に経営破綻した暗号資産(仮想通貨)取引所FTXトレーディング(FTX Trading)の創業者サム・バンクマン=フリード(Sam Bankman-Fried:SBF)氏の主張に対して懐疑的な姿勢を示した。同被告は、FTXの破綻に関する詐欺罪の有罪判決と禁固25年の刑期について、裁判が不公平だったとして破棄すべきだと主張している。
ニューヨーク州マンハッタンの米連邦控訴裁判所第2巡回区(2nd U.S. Circuit Court of Appeals)の3人の判事で構成される合議体は、公判から一部証拠が排除されたことが、同氏に対する7件すべての有罪評決(2023年11月)にどう影響を与えたかを疑問視した。
マリア・アラウジョ・カーン(Maria Araujo Kahn)判事は、弁護人のアレクサンドラ・シャピロ(Alexandra Shapiro)氏に対し「証拠の十分性自体を争わないのであれば、有罪認定に足る証拠があったことを認めるか」と質問。これに対しシャピロ氏は、仮に証拠が十分だったとしても、それは地裁判断の誤りが「無害」だったとは限らないと反論した。
検察官のネイサン・レーン(Nathan Rehn)氏は判事らに対して、証拠はSBF氏がFTXの顧客資産を盗用(不正流用)したことを圧倒的に裏づけていると主張した。
「横領資金について知る人物は4人いた。そのうち3人がSBFと共謀したと証言した」とレーン氏は、司法取引に応じた協力証人らを指して語った。
33歳のSBF氏は、暗号資産業界で最も影響力のある人物の一人であり、FTXが2022年に劇的に崩壊する前は数十億ドル規模の資産を持つ富豪だった。検察はこれを「空前の規模の詐欺」だと位置づけている。
マンハッタンの連邦陪審は2023年、同氏がFTXの顧客から80億ドル(約1兆2,279億円)を盗んだとして、詐欺など7件の刑事訴追すべてで有罪評決を下した。
公判で同氏は、FTXの経営において誤りを犯したことは認めたが、資金を盗んだ事実はないと証言した。
弁護団は控訴審で、地裁判事が「FTXには顧客の出金に応じるのに十分な資金がある」というSBF氏の主張を裏づける証拠の採用を認めなかったため、判決は不当だと訴えた。
これに対し検察は、3名の協力証人による証言や大量のFTX関連文書など、公判で提出された証拠が同氏の有罪を圧倒的に裏づけていると述べた。
報道によればSBF氏の側近らは、ドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領に対し恩赦を求めて働きかけているが、トランプ氏はそれを検討しているかどうか明言していない。ロイターはこれらの報道を独自には確認していない。
SBF氏は、荒波の暗号資産業界で頭角を現し、惜しみない慈善活動や政治献金によってその評判を高めていた。約1カ月にわたる公判では、暗号資産特化のヘッジファンドであるアラメダ・リサーチ(Alameda Research)の損失穴埋めのため、同氏の指示でFTXの顧客資産を流用したと、SBF氏の元側近らが証言した。
SBF氏は、2件の詐欺罪と5件の共謀罪で有罪判決を受けた。
2024年3月の量刑言い渡しで、連邦地裁のルイス・カプラン(Lewis Kaplan)判事は、SBF氏は自らの行為が間違いであることを理解していながら「露見の可能性をきわめて甘く見積もるという、非常に危険な賭けに出た」と述べた。
SBF氏は現在、ロサンゼルス近郊の低警備刑務所で服役中だ。仮釈放の資格を得る時期は2044年10月である。
※この記事は「あたらしい経済」がロイターからライセンスを受けて編集加筆したものです。
Appeals court skeptical of Sam Bankman-Fried’s bid to toss crypto fraud conviction
(Reporting by Jack Queen and Luc Cohen in New York; Editing by Noeleen Walder, Stephen Coates and Lisa Shumaker)
翻訳:大津賀新也(あたらしい経済)
画像:Reuters
関連ニュース
- FTX創業者SBF、「実際には破綻していなかった」と主張する文書を公開
- FTX創業者SBFのXアカウント、服役中の「gm」投稿でFTTの価格上昇
- FTX事件描くドラマ「The Altruists」がNetflixで配信決定、制作はオバマ夫妻の会社
- FTX破綻、元広告塔の大谷翔平や大坂なおみらへの訴訟は大半棄却
- FTX元CEOの両親、トランプ大統領にSBFの恩赦求め模索中か=報道










24h Most Popular




Utilities