zkSync開発企業Matter Labsが技術盗用で訴えられる
イーサリアム(Ethereum)のレイヤー2スケーリングソリューション「zkSync Era(zkシンクエラ)」を開発するマターラボ(Matter Labs)および同社に関わる人物が知的財産権を侵害したとして、廃業したデジタル資産銀行プラットフォーム「BANKEX」から提訴された。ニューヨーク州最高裁判所に3月19日に提出された訴状をもとに「米コインデスク(Coindesk)」が4月23日に報じた。
この訴訟は、原告であるBANKEXのCEOイゴール・フメル(Igor Khmel)氏とBANKEX財団が、元従業員のアレクサンドル・ヴラソフ(Alexandr Vlasov)氏とペトル・コロレフ(Petr Korolev)氏による同社からの技術盗用に対し起こしたもの。訴状によれば、両被告はBANKEX在職中に同社の技術を不正に使用し、競合企業であるマターラボを秘密裏に設立したとされている。
BANKEXは2017年にイーサリアム(Ethereum)共同創業者のヴィタリック・ブテリン(Vitalik Buterin)氏からプラズマ(Plasma)技術の運用ソフトウエア開発を依頼され、両被告は当時そのプロジェクトを担当してたという。
なお「コインデスク」によると現在、ヴラソフ氏はマターラボの研究開発部門の責任者を務めており、コロレフ氏はブロックチェーンセキュリティ企業のオクソリオ(OXORIO)の創設者となっているとのこと。
訴状では、マターラボがBANKEXの「Plasma Contract」や「Web3Swift Library」などのコードを無断でコピーし、ライセンス要件を無視して再利用したと主張。さらに、BANKEXの技術をヴラソフ氏自身のGitHub上で「アレクサンドル・ヴラソフ(Alex Vlasov)」の著作として公開していたとも指摘されている。
マターラボは、総額4億5,000万ドル(約638億円)超の資金を調達し、「ZKsync」やZKトークンなどのプロダクトを展開。原告は、現在もその技術的基盤にはBANKEXの成果が含まれていると主張している。
さらに原告は被告がBANKEXの従業員の引き抜きや、イーサリアム財団(Ethereum Foundation:EF)からの助成金獲得に成功し、結果としてBANKEXは急速に経営難に陥り、2019年に完全閉鎖したと指摘している。
また原告は、マターラボの立ち上げと成長には複数の投資家が出資しており、それら投資家も技術盗用を黙認・加担したと主張。
プレースホルダーキャピタル(Placeholder Capital)代表で、元マターラボの共同ディレクターであるクリストファー・バーニスケ(Christopher Berniske)氏、投資会社のプレースホルダーキャピタル(Placeholder Capital)及びプレースホルダーキャピタルマネジメント(Placeholder Capital Management)、暗号資産専門投資ファンドのドラゴンフライデジタルマネジメント(Dragonfly Digital Management)らも盗用へ関与したとして提訴された。
マターラボの広報担当者は米コインデスク(CoinDesk)に対し、これらの主張は全く根拠がないと声明を出した。
広報担当者は、マターラボがBANKEXで開発されたコードを基に「ZKsync」を構築したという主張を明確に否定し、「ZKsync」は、BANKEXで開発されたコードに依拠しない独自の技術だと主張している。
参考:訴状、CoinDesk
画像:Reuters
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