Canton Networkで2026年にMVP立ち上げへ

米国の金融市場インフラを担うデポジトリー・トラスト・アンド・クリアリング・コーポレーション（Depository Trust & Clearing Corporation：DTCC）が、デジタルアセットHD（Digital Asset Holdings）社との提携を12月17日に発表した。これによりDTCCの子会社DTC（The Depository Trust Company）がカストディ（保管）する米国債の一部を、デジタルアセット社が開発に関与する機関投資家向けブロックチェーン「カントンネットワーク（Canton Network）」上でトークン化する取り組みを開始するとのこと。

これはDTCCにとって、DTCカストディ資産をオンチェーンで利用可能にする包括的戦略の第一歩となるとのこと。DTCCは初めて、DTCで保管されている米国債の一部をカントンネットワーク上で発行する計画だ。

プロジェクトは2026年前半に、管理された本番環境での最小実用製品（MVP）立ち上げを目指しており、その後は顧客ニーズに応じて対象資産や規模を拡大していくという。なお、トークン化には、DTCCのプラットフォーム群「コンポーザーX（ComposerX）」が活用される。

この発表は、DTC保管の実物資産（RWA）をトークン化する新サービスの実装・運営に関して、DTCが米証券取引委員会（SEC）からノーアクションレターを受領したことを受けたものだという。同レターによりDTCは、一定条件の下で事前承認されたブロックチェーン上で3年間、管理された本番環境におけるトークン化サービス提供を進められるとしている。

DTCCのフランク・ラ・サラ（Frank La Salla）CEOは今回の提携を、「伝統的金融とデジタル金融のエコシステムを橋渡しするデジタルインフラ構築に向けた戦略的な一歩」だとし、「米国債を皮切りに、高価値な実世界資産のトークン化ユースケースを市場に提供する道筋を示す」とコメントしている。

本取り組みは段階的に進められ、初期フェーズでは、安全かつ規制に準拠した環境でデジタル化された金融商品へのアクセスを提供することに重点が置かれるとのこと。これにより、分散型技術の導入と既存規制の両立を図る狙いだ。

さらにDTCCは、カントンネットワークの分散型ガバナンスにおいても主導的な役割を担い、ユーロクリア（Euroclear）と共同でカントン財団（Canton Foundation）の共同議長に就任する予定だ。これにより、分散型金融インフラにおける業界標準の策定にも関与していくとしている。

DTCCは、証券のトークン化がマーケットメーカーやヘッジファンドを含む市場参加者に対し、オペレーション効率の向上、リスク低減、資本効率の改善といった大きな効果をもたらすと期待している。

なおカントンネットワークは12月16日、機関投資家向けの取引所および中央清算機関を統合したデジタル資産技術企業EDXマーケッツ（EDX Markets）との戦略的提携も発表した。

EDXマーケッツは、顧客が取引・決済できるようカントンコイン（CC ($0.08)）を現物取引所に上場するほか、カントンネットワーク上でのステーブルコイン決済をサポートする。これにより機関投資家は、求められる規制上の保護や業務監視を確保しつつ、より迅速かつ資本効率の高い取引が可能になるという。EDXはカントンネットワークのバリデーターとしても活動し、グローバル金融市場での採用拡大に伴い、ネットワークのセキュリティとガバナンス強化に貢献していくとのことだ。

Minting and using U.S. Treasuries on Canton is coming in 2026, enabling tokenized USTs to be exchanged in near-real-time with stablecoins and other digital assets – all with the privacy and controls regulated markets demand.

A major unlock for global collateral mobility to… pic.twitter.com/XnvdprRq7X

参考：発表・ノーアクションレター・EDX Markets発表
画像：iStock/ustinroque

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