
EUでテーブルコインの緊急安全対策が要求される
EU(欧州連合)の金融リスク監視機関が、域内での発行割合が一部にとどまるステーブルコインに対し、緊急のセーフガード(安全策)を講じるよう10月2日に要請した。このことはECB(欧州中央銀行)の警告を反映したもので、同行はステーブルコインの破綻が準備資産への取り付け騒ぎを引き起こす可能性を懸念している。
ステーブルコインは、主にドルなどの法定通貨の価値に連動するように設計された、ブロックチェーン上で発行・移転されるトークンの一種。法定通貨以外の金や暗号資産(仮想通貨)に裏付けられるものや、需要調整で価格安定を図るアルゴリズム型も存在する。現在ステーブルコインは、低コストで効率的な国境を越えた決済ツールとして、また伝統的な金融とデジタル資産をつなぐ架け橋として注目されている。
EUは暗号資産に関して世界でも最も厳格な規制の一つを整備しているが、政策当局は域外を本拠とする発行体がより緩い規制の恩恵を受け、金融リスクを域内に輸入する可能性を懸念している。
ECBのクリスティーヌ・ラガルド(Christine Lagarde)総裁が議長を務める欧州システムリスク委員会(ESRB)は声明で「第三国の複数発行者スキーム(EU域内外で発行される代替可能なステーブルコイン)には内在的な脆弱性があり、緊急の政策対応が必要だ」と強調した。
EUの規則では、ステーブルコインに準備資産による全額裏付けを義務付けられている。ラガルド総裁は、EU内外の双方でステーブルコインを発行する企業に対し、EUが同一基準を適用すべきだと述べた。
複数発行者スキームでは、EUの域内と域外の事業体が共同でステーブルコインを発行するが、厳格なEU規制は域外発行者には適用されず、競争条件に歪みが生じる。
主な懸念は、資産への取り付け騒ぎが発生した場合、最も強力な保護措置が講じられているEU域内で投資家が償還を選択する点だ。
しかし、EU域内に保有される準備資産だけでは集中する償還需要に対応しきれず、域内で流動性逼迫を引き起こす可能性がある。そうなれば最終的にECBが対応を迫られる事態になりかねない。
ESRBは「多機能グループは金融コングロマリットよりもはるかに緩い規制下で運営される可能性があり、異なる慎重性基準の問題を提起する」と付け加えた。
※この記事は「あたらしい経済」がロイターからライセンスを受けて編集加筆したものです。
EU risk watchdog calls for urgent safeguards on stablecoins
(Reporting by Balazs Koranyi; Editing by Hugh Lawson)
翻訳:大津賀新也(あたらしい経済)
画像:Reuters
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