ECB総裁が海外ステーブルコイン発行体に安全策と同等性制度を求める
欧州中央銀行(European Central Bank:ECB)総裁のクリスティーヌ・ラガルド(Christine Lagarde)氏が、欧州連合(EU)の立法者は、海外のステーブルコイン発行体に対してもセーフガード(安全策)と強固な同等性制度(equivalence regimes)を求めるべきだと9月3日に述べた。EU域内に保有される準備資産に対する取り付けリスクを防ぐ狙いだ。
EUは世界でも最も厳格な部類の暗号資産(仮想通貨)規制を整備しており、法定通貨に連動するステーブルコインについては、準備資産による全額裏付けを義務づけている。
しかしラガルド氏は、EU内外を問わずステーブルコインを発行する企業に対し、同等の高い基準を適用すべきだと述べた。
「欧州の立法は、他管轄区域における強固な同等性制度と、EU域内・域外事業体間の資産移転に関する安全策が整っていない限り、こうしたスキームがEUで運営できないことを保証すべきだ」と同氏は規制会議で語った。
またラガルド氏は「これはまた、国際協調が不可欠である理由を浮き彫りにしている。世界的な公平な競争環境がなければ、リスクは常に最も抵抗の少ない経路を探すことになる」と述べた。
同会議で後に発言したイタリアの市場規制当局のフェデリコ・コルネッリ(Federico Cornelli)氏は、EUの規則はステーブルコインを含む暗号資産が、いかなる金融取引においても法定通貨とはみなされないことを明確にすべきだと指摘した。
「ECBが発行するユーロのみが法定通貨であり、この点は全ての市民に対してきわめて明確に伝えねばならない」と、イタリアの市場監視機関(CONSOB)の委員であるコルネリは述べた。
ECBはユーロ圏の銀行に対する最後の貸し手であり、主要な監督当局でもある。また各国当局とともにEUの金融安定にも責任を負っている。
ラガルド氏は、EUの暗号資産規制「MiCAR(Markets in Crypto-Assets Regulation)」により、域内外で発行されたステーブルコイン保有者は、任意の場所で償還できることが認められていると指摘した。
これは、準備資産に対する要件がより厳格であることから、取り付け発生時には投資家がEUでの償還を選好する可能性が高いことを意味する。しかし、EU域内に保有されている準備資産は、そうした投げ売り(ファイアセール)の局面では不足する恐れがある。
「取り付け騒ぎが起きた場合、投資家は当然ながら最も強力な保護措置が講じられている管轄区域での償還を望むだろう。それは、おそらくEUであり、MiCARは償還手数料も禁じている」とラガルド氏は述べた。「しかし、EU域内に保有されている準備資産だけでは、そうした集中した需要に応えられない可能性がある」と同氏は付け加えた。
※この記事は「あたらしい経済」がロイターからライセンスを受けて編集加筆したものです。
ECB’s Lagarde says EU should close loopholes in stablecoin regulation
(Reporting by Francesco Canepa; editing by Balazs Koranyi, William Maclean and Timothy Heritage)
翻訳:大津賀新也(あたらしい経済)
画像:Reuters
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