
米コインベースがデラウェア州から撤退
暗号資産(仮想通貨)取引所コインベース(Coinbase)が、11月12日に提出した規制当局向け書類で、登記地を米デラウェア州からテキサス州へ移し、テキサス州で再設立(再登記)する方針を明らかにした。テキサス州がイノベーティブな企業にとって新たなビジネス拠点として魅力が高まっていることを同取引所は移転の理由に挙げている。
テキサス州は、ビジネス環境の良さ、より友好的な税制、比較的軽い規制要件に加え、ビジネス関連訴訟を専門に扱う新たな裁判所の設置を目指す立法などをテコに企業を誘致しており、米国企業にとって「新たなお気に入り」の地位を確立しつつある。
昨年以降、企業評価額が10億ドル(約1,548億円)超の複数の企業が、法的な本拠地をデラウェア州から他州へ移しており、一部ではこうした動きを「デクジット(Dexit)」と揶揄している。
テスラ(Tesla)は昨年、注目を集めた本社移転でテキサス州へ登記を移した。また、「トゥルース・ソーシャル(Truth Social)」を運営するトランプ・メディア&テクノロジー(Trump Media & Technology)は、4月に本拠地をフロリダ州に移している。
ロンドン証券取引所グループ(LSEG)のデータによると、コインベースの時価総額は約820億ドル(約12兆6,956億円)に達しており、本拠地を移す企業としては最大級の一社となる。
「数十年にわたり、デラウェア州は予測可能な裁判結果、企業の取締役会の判断への敬意、そして迅速な紛争解決で知られてきた」と、コインベースのチーフリーガルオフィサー(CLO)であるポール・グレワル(Paul Grewal)氏は、12日付の米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(Wall Street Journal)に寄稿した論説記事の中で述べた。
しかしグレワル氏によれば、デラウェア州の裁判官らは近年、支配株主や経営支配者(コントローラー)が関わるさまざまな状況に対して、裁判所における最も厳しい法的基準の適用範囲を広げており、その結果として株主による訴訟リスクが高まっているという。
こうした判断は昨年の「大型判決」、すなわちテスラにおけるイーロン・マスク(Elon Musk)氏の報酬パッケージ約560億ドル(約8兆6,702億円)を無効とした裁判所の判決に至った。マスク氏はこの判決後、X(旧Twitter)上で「決してデラウェア州で会社を設立するな」と投稿していた。
「このような事態になってしまったのは残念だが、デラウェア州は私たちにほとんど選択肢を残してくれなかった」と、グレワル氏は付け加えた。
テキサス州はここ数年、規制の明確さや事業コストの低さを売りに暗号資産関連企業の誘致を強化している。他の法域で不透明感が広がる中、テキサス州はブロックチェーン開発のハブとして存在感を増している。
なおコインベースは、米国で上場している暗号資産取引所としては最大手である。
※この記事は「あたらしい経済」がロイターからライセンスを受けて編集加筆したものです。
Crypto exchange Coinbase to reincorporate in Texas, exit Delaware
(Reporting by Pritam Biswas in Bengaluru; Editing by Shailesh Kuber)
翻訳:大津賀新也(あたらしい経済)
画像:Reuters
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