
a16zがレターを公開
米大手ベンチャーキャピタルのアンドリーセン・ホロウィッツ(Andreessen Horowitz:a16z)は、銀行が暗号資産(仮想通貨)やフィンテックアプリに高額な手数料を課そうとしていると7月31日のニュースレターで伝えている。
このニュースレターは、a16zのジェネラル・パートナーのアレックス・ランぺル(Alex Rampell)氏によるもの。ランペル氏はa16zの10億ドル(約1,478億円)規模のアプリ部門を率いており、B2BとB2Cのスタートアップ業界の多様な分野とステージに投資している人物だ。
ランペル氏は、暗号資産企業の銀行サービス利用を妨げるバイデン前政権下での政策「オペレーション・チョークポイント2.0(Operation Chokepoint 2.0)」を引用し、「その時代は終わったが、今は銀行が、暗号資産やフィンテックアプリへのデータアクセスや資金移動に異常な高額手数料を課し、好まない暗号資産やフィンテックアプリをブロックするといった、独自のチョークポイント3.0(Chokepoint 3.0)を実施しようとしている」と警告した。
これは7月下旬に報じられた、JPモルガン(JPMorgan)が金融テクノロジー企業に対し、顧客の銀行口座情報へのアクセスに数億ドルの手数料を課す計画について言及したものだ。
ランペル氏が特に問題視したのは、単なる口座番号やルーティングコードといった、紙の小切手裏面にも印刷されている基本情報であっても、課金対象となるデータと見なされる点だ。同しは、電子的な送信時に高額手数料を課すべきと主張する銀行の姿勢を批判している。
仮にコインベース(Coinbase)やロビンフッド(Robinhood)の口座への100ドル送金に10ドルがかかれば、多くの利用者が取引をやめる可能性が高い。さらに、フィンテックから安いローンを借りる際にも10ドルの手数料がかかれば、結果的にJPモルガンなど大手銀行から高コストのローンを借りざるを得なくなるとし、こうした制約は消費者の自由な選択を奪い、業界の競争を不当に歪めるとランペル氏は強調した。
ランペル氏は「理想的には消費者はウォレットで意思表示できるはずだが、すべての銀行が高額な手数料を課す同様の動きをすれば市場の健全性が損なわれる」と警鐘を鳴らしている。
米暗号資産規制の枠組みに包括的提言も
またa16zは同日付で米上院銀行委員会に宛てたレターで、米国の暗号資産規制に関する包括的提言を示した。このレターは7月22日に公表された市場構造討議草案に対するフィードバックだ。この草案は21世紀金融イノベーション・テクノロジー法(CLARITY法)に基づき、業界からの意見募集(Request for Information:RFI)を行っている。
a16zは、草案で用いられた「付随資産(ancillary asset)」の定義について指摘。投資契約とともに販売されるが、株式や配当、ガバナンス権を伴わないトークンについて、付随資産の構成は、大幅な修正なしに立法の基礎として機能すべきではないと指摘。このアプローチでは「暗号市場参加者が直面する課題を解決できないと述べ、そのうえで、CLARITY法の狭義なデジタル商品(digital commodity)の枠組みを採用することを推奨し、この方が規制の簡素さを保ちつつ、より法的確実性が高まるとした。
レターは、現行アプローチが暗号市場の根本的な問題を解消しておらず、証券を定義する長年の法的基準であるハウィーテストとの整合性を欠くとも指摘している。
a16zはハウィーテストの経済的実態重視という原則は維持すべきとしつつ、デジタル資産向けに近代化された適用を成文化する必要があると主張。逆に、ハウィーテストを形式主義的に狭める改正案は「不要かつ危険」で投資家保護を損なうと強く反対している。
a16zはまた、一次取引を証券法、二次取引をコモディティ規制に分ける枠組みは抜け穴を生みかねないと警告。
免除規定を悪用し、発行者が付随資産をインサイダーに売却後、十分な規制なしに公開市場で転売できるリスクを指摘した。プロジェクトが支配権を排除し分散化を進めることで、インサイダーによる不当な利益を抑え、これを防ぐことができるとし、プライマリー市場とセカンダリー市場の区別が有効に機能するとしている。
参考:ニュースレター・RFIレター・Alex Rampell・Forbes
画像:PIXTA
関連ニュース
- 米SECが「プロジェクト・クリプト」開始。現代型規制に転換へ
- a16z、登録投資顧問に対する「暗号資産カストディ規則」見直し提言
- a16zクリプト、「2025年に向けた7つのビッグアイデア」を公開。分散型ガバナンスのトレンドにも言及
- 米上院銀行委員会、デジタル資産市場構造法案の議論草案を公表
- 米下院、ステーブルコイン規制法案を可決。トランプ大統領署名で成立へ







24h Most Popular






Utilities