
販売所誘導や流出対策も議論
金融庁が、11月26日に開催された金融審議会「暗号資産制度に関するワーキング・グループ」が取りまとめた報告書案において、暗号資産を金融商品取引法(金商法)の枠組みで規制する制度改正案を示した。従来の資金決済法を中心とした規制体系から転換し、投資商品としての性格を踏まえた包括的な投資家保護の強化を打ち出した。
報告書によると、2025年9月時点で、国内の暗号資産交換業者における口座開設数は延べ1,300万口座を超え、利用者の預託金残高は5兆円以上に達している。また、暗号資産(仮想通貨)保有者の約7割が年収700万円未満の所得層で、個人口座の預かり資産額は8割以上が10万円未満となっており、暗号資産投資が一般層にも広く浸透している実態が示された。
一方、金融庁「金融サービス利用者相談室」には、暗号資産に関する苦情・相談が月平均で350件以上寄せられており、その大半が詐欺的な投資勧誘に関するものだという。価格変動の大きさや情報の不透明性が被害拡大の背景にあり、利用者保護の必要性が一段と高まっていると指摘した。
喫緊の課題として、適切な取引環境整備と利用者保護が挙げられた。
具体的には、情報提供の充実と適正な取引の確保、厳格な規制により無登録業者による違法な勧誘等を抑止するといった対応、さらに、投資運用等に係る不適切行為への対応として、暗号資産の投資運用行為 (アセットマネジメント) やアドバイス行為について適正な運営確保も検討すべきとした。
その他インサイダー取引について対応強化や、セキュリティの確保も対応すべき項目として記されている。
特に制度見直しの柱は、暗号資産を金商法上の新たな規制対象として位置付ける点にある。暗号資産は有価証券とは異なるものの、価格変動によるリターンを期待した取引が主流となっていることから、投資商品と同様の横断的な規制を適用する方針だ。
中でも重視されるのが、情報提供規制の強化で、新規に暗号資産が販売される際には、供給量や発行上限、中央集権的な管理者の有無、資金使途や事業計画、技術的リスクや監査状況などについて、利用者に分かりやすく開示することを義務付ける。とりわけ、発行主体が価格形成や供給を実質的に支配する「中央集権型暗号資産」については、発行者自身に直接的な情報開示義務を課す構えだ。
また、交換業者のビジネスモデルについても踏み込んだ指摘がなされた。報告書では、暗号資産交換業者の中には、「販売所」と「取引所」の2形態で売買サービスを提供している事業者が存在するが、一般に販売所取引の方が交換業者にとって収益性が高いことから、顧客を販売所取引へ誘導しているのではないかとの懸念があると明記されている。
金商法では、顧客の注文を最良の条件で執行するための「最良執行義務」が定められていることを踏まえ、暗号資産交換業者においても、顧客へのサービス提供のあり方が適切なものとなっているか、同様の観点から検討すべきだとしている。
報告書では、これまで暗号資産を主に規制してきた資金決済法から、原則として暗号資産関連の規制を削除し、売買、勧誘、運用、助言、資産管理、市場監視までを金商法に集約して包括的に監督すべきだと提言した。これにより、無登録業者に対する差止命令や課徴金制度、刑事罰の適用、証券取引等監視委員会による調査など、従来よりも強力な執行手段が暗号資産取引にも及ぶ見込みだ。
なお、日経新聞は11月24日、金融庁が暗号資産交換業者に対し、不正流出などに備える準備金の積立を義務化する方向で検討していると報じた。金融庁は、金融商品取引法(金商法)の改正案を2026年の通常国会にて提出する見込みだ。
参考:金融審議会 暗号資産制度に関するワーキング・グループ報告 (案)
画像:iStocks/Rawpixel
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