
シティが暗号資産カストディ提供を検討
米シティグループ(Citigroup)が、ステーブルコインのカストディ(保管)やその他のサービスの提供を検討していると、同社の幹部が「ロイター(Reuters)」に語った。このことは、ワシントンで進む大規模な政策変更が主要金融機関に暗号資産(仮想通貨)ビジネスへの拡大を促していることを示す、さらなる兆候だ。
米議会がステーブルコインを決済やその他のサービスに広く利用できるよう法律を可決したことを受け、シティは、ファイサーブ(Fiserv)やバンク・オブ・アメリカ(Bank of America)など一部の伝統的金融機関と並び、ステーブルコイン分野への進出を検討している。
その法律は、ステーブルコインの発行体に対し、米国債や現金といった安全資産を保有してデジタルコインを裏付けることを求めており、従来型のカストディ銀行がこれら資産の保管・管理を担う機会が生まれている。
「ステーブルコインを裏付ける高品質な資産のカストディを提供することが、われわれが最初に検討している選択肢だ」と、シティのサービス部門でパートナーシップ&イノベーションを統括するグローバル責任者、ビスワルプ・チャタジー(Biswarup Chatterjee)氏はインタビューで述べた。トレジャリー、資金管理、決済など大企業向けサービスを含むシティのサービス事業は、同行が大規模な再編を進める中にあっても中核部門のままだ。
マッキンゼー(McKinsey)の試算によれば、これまでに発行されたステーブルコインは約2,500億ドル(約36兆9,736億2,500万円)だが、その大半は暗号資産取引の決済に用いられている。シティは先月、自社発行のステーブルコインの可能性を検討していると述べたものの、より広範なデジタル資産計画についてはこれまで公には語ってこなかった。
またシティは、暗号資産関連の投資商品を裏付けるデジタル資産のカストディ提供も検討している。例えば、米証券取引委員会(SEC)がビットコインの現物価格に連動するETF(上場投資信託)を昨年(2024年)に承認して以来、多くの資産運用会社が同様のETFを相次いで上場させている。
最大のビットコインETFであるブラックロック(BlackRock)の「アイシェアーズ・ビットコイン・トラスト(iShares Bitcoin Trust)」は、時価総額が約900億ドル(約13兆3,105億500万円)に上る。「これらETFを支えるには、それと同額のデジタル通貨のカストディが必要になる」と、チャタジー氏は述べた。
現状、この分野を主導しているのは暗号資産取引所コインベース(Coinbase)だ。コインベースの広報担当者は声明で、同社が暗号資産ETFの発行体の8割超に対してカストディアンとしてサービスを提供していると述べた。 ・シティはまた、支払いの迅速化にステーブルコインを活用することも検討している。従来の銀行システムでは、支払いには通常、数日以上を要するためだ。
現在、シティはブロックチェーンネットワークを用いて、ニューヨーク、ロンドン、香港の口座間で米ドルを24時間移転する「トークン化された」米ドル決済を提供している。チャタジー氏によると同社は、顧客が口座間でステーブルコインの送金や、ステーブルコインをドルに即時転換して支払えるようにするサービスの開発を進めており、ユースケースについて顧客と協議しているとのことだ。
かつては、ボラティリティの高い暗号資産分野への伝統的金融機関の進出に慎重だった当局だが、ドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領の下で暗号資産に前向きな現政権のもと、銀行・証券規制当局はこの分野に対してより柔軟な姿勢を示している。
それでもなお、シティや他の企業は、国際送金における一部の国のマネーロンダリング(資金洗浄)規制や為替管理など、現行規制を遵守しなければならない。チャタジー氏は、暗号資産のカストディでは、取得前にそれら資産が正当な目的に用いられていたことの確認が必要であり、また保管と盗難防止のためにサイバーおよび運用セキュリティを強化する必要があると述べた。加えて、同行によるステーブルコインの発行についても検討中であると付け加えた。
※この記事は「あたらしい経済」がロイターからライセンスを受けて編集加筆したものです。
Citigroup considers custody and payment services for stablecoins, crypto ETFs
(Reporting by Tatiana Bautzer and Hannah Lang, editing by Lananh Nguyen, Michelle Price, Rod Nickel)
翻訳:大津賀新也(あたらしい経済)
画像:Reuters
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