Web4:Social Monies 思想とは? そして無限/誠実性で捉えた世界(Jupiter Meow × Ecdysis 落合渉悟)

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NewEconomy JP 2 months ago 158

Web4:Social Monies 思想とは? 

ソラナ上の「ジュピター(Jupiter)」の共同創業者であるMeow氏。同氏が提唱する「Web4:Social Monies」という思想が話題を呼んでいる。「Web4」とは、今のWeb3と何が異なり、何を目指すものなのか? 国内で黎明期からブロックチェーン・エンジニアとして活動/研究をしてきたEcdysis CEO 落合渉悟氏が、自身が提唱する無限/有限×誠実/不誠実の四象限を用いてMeow氏の思想に迫る。2人の思想家の知識が交錯する、約20,000字のロング対談、ぜひお楽しみいただきたい。

本記事の参考リンク;「Web4:Social Monies」

対談者プロフィール

Meow
Juiter CoFounder
これまでInstadapp、Fluid、Kyber、Blockfolioでリードアドバイザーを務める。またHandshakeの創設メンバーの一人で、ソラナ上のDEX「Meteora」の共同創業者でもある。本対談の主題でもある「Web4:Social Monies」という新たな概念を2024年から提唱し、2025年にはその概念をまとめた論文(ドラフト)を自身のWebサイト上で公開した。
X:https://x.com/weremeow

落合渉悟(Shogo Ochiai)
株式会社Ecdysis CEO
パブリックチェーン研究のパイオニアとしてスマートコントラクトの設計をリードする、起業家、技術者、著述家。イーサリアムとその周辺技術に深くコミットし、2023年にERC-7546「Upgradeable Clone for Scalable Contracts」の共同著者として提案。また研究の傍ら佐賀で農業共同体を推進し、AGI時代の真に自己主権的な世界観(ShadowAccelerationism, s/acc)を模索。著書に『僕たちはメタ国家で暮らすことに決めた』(フォレスト出版)。
X:https://x.com/shogochiai

Jupiter Meow × Ecdysis 落合渉悟 20,000字対談

落合:はじめまして、Meowさん。今日の対談のために、佐賀県から来ました。はじめに簡単に自己紹介させていただくと、私は普段はブロックチェーン・エンジニアをしながら、あと農業もしているんですよ。

落合渉悟氏

Meow:なぜ農業? クリプトと農業は、全然別の世界ですよね。

落合:はい、全く違います。でも私の中では2つのマトリックスがあるんです。一つは無限性、もう一つは有限性。実は今日のテーマであるMeowさんの「Web4」の概念についての論文とも近い考えだと思っているのです。Meowさんも無限性についてよくブログで表現されていると私は感じているんです。

クリプトには無数のトークンがあり、ミームカルチャーや文化的なコミュニケーションも無限に広がっていく必要がある。『Infinite Game』という有名な本がありますし、イーサリアム財団も “infinite garden” がコミュニティの重要なエートスだと発信しています。

Meowさんの「Web4」の概念も、そうした無限性に共鳴しているように思えました。多くのトークンが発行され、それぞれのトークンにコミュニティが生まれ、コミュニティとトークンは無限に増えていく。

一方で、私のやっているリアルな農業は、トークンファーミングではなく、本当のファーミング(農業)です。それは完全に有限の世界です。なぜなら土や日光はある程度無限に見えるかもしれませんが、水には限りがあります。土を耕して、収穫して、すべてが計算され尽くされた有限の世界です。

クリプトと農業、この2つの異なる世界が、私にはとても興味深い関係に見えています。

Meow: すごく面白い。陰と陽の関係ですよね。無限と物理的な有限。私もまさにその視点が好きなんです。常に世界を見るときに、私は二重のレンズで見ることが大切だと思っています。一方では無限を理解する必要があります。たとえば、人間のエネルギー、創造性、社会的なエネルギー、アイデア――すべて無限ですよね。

Meow氏

そしてお金って、基本的にはアイデアなんですよ。だからこそ、それも無限になり得る。たとえば、私と落合さんで1つのアイデアを生み出します、そしてそのアイデアをトークンとして発行し、そのアイデアに共感する人たちがたくさん集まると、そのアイデアには自動的に価値が生まれますよね。

落合: 文化だけじゃなく、イデオロギーも含めてということですよね。

Meow: そう、何でもです。クリプトのすごいところは「多くの人々が信じれば価値が生まれる」という点にあります。

具体的な資産として具現化され、その結果、資産として他の何かのために使うことができる。しかし、逆に考えてみてください。人々がそれを信じなくなった瞬間、どうなると思いますか?

落合: 消えてしまいますね。

Meow: その通り。消えるんです。信じる人がいなくなれば、価値も消えます。

でも、例えばこのテーブルを見てください(Meow氏、対談場所にあった木のテーブルを数回叩く)。もし今この部屋にいる全員が「このテーブルは存在しない」と思ったとしても、テーブルはまだここにありますよね? 存在するんです。信じようが信じまいが関係なく、物理的に存在する。つまり、人間社会は2つの要素でできているということなのです。

一方では、それが私たちの能力――人間社会は2つのパラドックスで成り立っていますね。1つは有限なものを実際に使える形にする力。そしてもう1つは、完全に想像上のもの、アイデア、企業、国家、宗教などに価値を見出し、それを現実化する力。この両方を理解することが、世界を捉える正しい方法だと私は思います。

私たちは、「物理的なもの、つまり有限なものをどう現実化するか」も重要ですが、同時に「完全に仮想的なもの」が、十分な数の人に信じられることで、ものすごく価値を持つことがある。それも理解する必要があると思っています。

だから私は、この2つの側面の両方を理解し、感謝することが大切だと思っています。

たとえば、有限なものへの感謝。私は日本の近藤麻理恵(こんまり)さんの考え方はすごく面白いと思うんです、クールです。彼女は何かを買って、もう使わなくなったら、それをそのまま捨てるのではなくて、「ありがとう、来てくれてありがとう、感謝しています」と言ってから手放しますよね。あれこそ「有限なものへの感謝」だと思うんです。

同じように、私の「Web4」の論文の大部分が、「トークンをただ作るのではなく、きちんとそれを大切にするべきだ」ということなんです。トークンに感謝すべきだと思います。 

落合: 関係性やコミュニティですね。

Meow: そう、関係性、企業、象徴性。たとえば、ほとんどの国で国旗を燃やすことは侮辱行為になりますよね? なぜなら国旗は、その国の象徴、重要なシンボルとみなされるからです。例えば、ニューヨークに行ってアメリカ国旗を燃やすのも、大問題になりますよね?

落合: はい、その通りです。国家の重要な象徴ですからね。

Meow: そう。だからトークンやコインも同じように、「アイデアの象徴」として非常に重要な存在なんです。そして、私たちのようにトークンを作る力を持っている人間こそ、その象徴を大切に扱うべきだと思っています。

これは本当に重要なポイントです。たとえそれが物理的なもの、有限なもの、あるいは無限なものだったとしても、それぞれに価値がある。私はそう考えています。

落合: なるほど。そして私は無限/有限に加えて、さらに2つのマトリックスがあると考えているんです。それは「誠実(honesty)」と「不誠実(dishonesty)」です。「誠実な無限」と「不誠実な無限」、また「誠実な有限」と「不誠実な有限」がある。

手元の紙に四象限マトリクスを書く落合氏
上記図はそのメモを図解したもの

たとえば、自分の手で農業をするのは「誠実な有限(honesty ・finity)」です。でも、大きなトラクターを使って、大量のオイルを消費して行う農業は「不誠実な有限(dishonesty・finity)」だと考えられます。そして伝統的金融は、僕にとって「不誠実な無限(dishonesty・infinity)」です。

Meow:面白い。なぜそう思うんですか? 続けてください。

落合: 国債の発行や新しい法定通貨の創出、国家レベルの借金の積み重ね、条約の締結――そうやって新しい法定通貨を無限に作っていく。これは「不誠実な無限」だと思っています。つまり資本主義そのものが、僕の考えでは「不誠実な無限」に近い。

ではビットコインはどうでしょう? ビットコインには素晴らしいコミュニティがあって、堅牢な――いや、むしろ「アンチフラジャイル(反脆い)」なシステムが存在しています。ビットコインはトークンの総量としては有限ですが、そのネットワーク自体は将来的に無限に広がっていく、発展していくと考えています。

つまり私はビットコインは「誠実な無限性」の一例だと考えています。私は常に「他に、素晴らしい誠実な無限性はないか?」という問いを持っているのです。

だから、Meowさんの「Web4」の論文に、とても興味があるんです。Meowさんはいつも、その「誠実な無限性」の周りを歩いているように感じます。そこがあなたの論文の素晴らしい点ですね。

まさに「シニフィエ(fr:signifié, en:signifier)」と「シニフィアン(fr: signifiant, en: signified)」という概念です。

たとえば、これはカップだとします。でも「カップ」という言葉を知る前に、温かい液体が入った入れ物として認識しますよね。つまり、言語の前に頭の中にある何か。それがンシニフィエです。たとえば、大規模言語モデルを使っていて、何かを形にしたいけど言葉にできない。でもLLM(大規模言語モデル)に聞くと、言葉として目の前に現れてくる。その前段階にある脳内の概念、それがシニフィエです。

(図を右上 honesty・infinityの部分指差しながら)ここにビットコインがあるとしたら、この辺りに他の何かが存在して、左上(dishonesty・infinity)の領域には法定通貨や国家があります。そして完全に想像上の価値のいくつかは右の領域へ行く。

Meow: その「signifier」とはどういう意味なんですか? スペルを教えてもらえますか? (机の上の紙にスペルを書く落合氏)あ、なるほど、”significance” と関連するんですね。言葉が生まれる前には「概念」があるという話ですよね。そして、言葉ができることでその概念が形を持つ。

ルートヴィヒ・ウィトゲンシュタインの概念を思い出しました。有名なドイツの哲学者なんですけど、彼の考え方は「言語が現実を定義する」というものなんです。つまり、言語を使うことで……2つのことがあると思うんです。言語というのは、現実を「記述する」こともできるし、逆に「定義する」こともできる。

大抵の人は、言語は現実を記述するものだと考えますよね。「これはテーブルだ」とか、「あれは木だ」とか、現実にあるものに名前をつけていくという意味で。でも彼の主張は、それだけじゃなく、言語というのは非常に強力な手段であり、「現実を定義する力」を持っているということなんです。つまり、「どう言うか」によって、「どう捉えるか」が決まってくる。そういう力があるということです。

落合: まさにその通りです。そして、Meowさんは「Web4」という言葉を作りました。その「Web4」に沿って、いくつかのコンセプトが始まっています。コミュニティや文化だけでなく、イデオロギーやミームなど、あらゆるものがトークンに沿った価値を持つようになるでしょう。それを無限にするにはどうすればいいのでしょうか? これがMeowさんにまず質問してみたかったことです。

Meow: それと関係する話として、落合さんが言っていた法定通貨に関する考え方なんですけど、私は実は、かなり一般的で普遍的な「お金」の捉え方をしているんです。そしてここが、私が他の多くのクリプト業界の人たちと大きく違うところだと考えています。私は、法定通貨は「良いもの」だと思っているんですよ。それに、金(ゴールド)も銀(シルバー)も良い。そしてビットコインも。

また1日しか生きれないミームコインにさえも価値があると思ってるんです。なぜなら、全ての通貨――たとえそれが米ドルでも金でも、昔の貝殻でも。あるいは大きな石版を使って会計していた――これらすべてが「価値の表現」だからです。どれも美しいものなんですよ。

私はどんな通貨も、それが短命であろうと長続きしようと、「価値の顕現」だと考えています。そして、たとえば成功している米ドルやシンガポールドルのような通貨、、またゴールドでもビットコインでも、それらすべては「人々の協働」によって価値を持つようになるんです。

関わっているすべての人が協力し合って、価値が生まれるかどうかを決める。たとえばビットコイン。単に売買するだけでもいいんです。保有してもいい。でもそれだけじゃなくて、「ビットコインはすごいぞ!これはマネーを分散化する!フィアットは終わりだ!」って世界中に発信する人もいますよね。

でもどんな行動であっても、それ自体が「システムの一部」なんです。つまり、あなたはすでにそのコミュニティの一員になっているということ。

ビットコインを1日だけ買ったとしても、2日だけ持ったとしても、もうその時点であなたはその仕組みの中にいるんです。さらにすごいところは、「存在し続けている」。勝手になくなったりしないんです。

価値がたとえゼロになったとしても、存在し続けます。私の論文にも書いているのですが、すべてのお金というのは、それを持ち、使い、関わっているコミュニティの「鏡」なんです。

トークンやお金というものは、非常に強力な存在です。なぜなら、考えてみてください。お金というのは、人種も宗教も国籍もすべてを越えて、価値を調整する唯一の共通手段なんですよ。本当に力のある「共通言語」です。

私もジュピターでJUP ($0.41)というトークンを扱っていて、かなり大きなグローバルなコミュニティを持っています。

そして私にははっきり分かるんです。つまり、何か1つ、コミュニティがまとまる象徴があれば、それは非常に強力な存在になります。問題は「それをどうガバナンスするか」「どう活用するか」「誰が参加できるのか」という点です。

私にとってはそれがとても重要なことなんです。たとえばソラナ(SOL ($188.86))のようなコインでも、あるいは他のコインでも、すべては一つの「協働によるアート」なんです。まさに、コラボレーションによって生まれたアート作品のようなものなんです。美しく素晴らしいものなんです。

私たちが「言葉で現実を表現する」と言うように、お金というのは人々が協力して描く1つのアートだと考えています。

それぞれの通貨が、「どう見えるか」「どう機能するか」を考えて作られている。それが私の考え方です。だからビットコインでも、ミームコインでも、コミュニティコインでも、法定通貨と違って「誰でも作れる」っていうのが魅力なんです。

落合: パーミッションレスですね。

Meow: そう、パーミッションレス。つまり、誰にも止められないということです。一方、法定通貨をあなたが発行しようとしたら、かなり大変ですよね。国家を征服しないといけない。どこかの島に行って戦って、支配して……。

落合: それに課税制度も必要ですね。

Meow: そう、税制やその他の仕組みも整えなければならない。相当大変ですよね。今部屋を飛び出して道路にいるタクシー運転手さんに「お金って何だと思いますか?」って聞いてみてください。多くの人は「お金は自分で作れるもの」だとは思ってもいない。

落合: そうですね、思っていませんね。

Meow: もしかしたら、これが落合さんの言っていた「誠実/不誠実のプレイブック」の話につながってくるのかもしれません。私の考えでは、それは「誠実かどうか」というよりも、「誰がそのシステムに参加できるのか」という話だと思っています。

たとえば、シンガポールドルのほうが多くのクリプトプロジェクトよりよっぽど誠実だと私は思っています。

落合: ドルに裏付けされていますからね。

Meow: そうなんです。そして、私たちがJUPトークンを運営する上でも、できる限り透明性を保っています。パブリックレポートを出して、誰がどう使っているかが分かるようにしています。でも、もちろんそうではないプロジェクトもたくさんあります。

だから私は、単純に「誠実/不誠実」と分けるのではなく、「誰がアクセスできるか」「誰が参加できるのか」で考える方が本質に近いと思っています。たとえば、米ドルのような極端な例を考えてみましょう。

落合: ブラックボックスと透明性、という話ですね。

Meow: そうです。ただ私としては、「透明性がある/ない」という表現はあまり使いたくないんです。なぜなら、それを定義できる自信がないから。たとえば私は、良い法定通貨の方が、多くのクリプトプロジェクトよりも透明性が高いと考えています。

5年前は、もしくは3年前は、「法定通貨の方がビットコインよりも優れている、なぜなら流動性があるから」と言っていた人が多かったですよね。

でも、実際どうですか? ビットコインと北朝鮮ウォン、どっちが流動的だと思いますか? もちろんビットコインの方ですよね。そして正直に言うと、無名のミームコインでさえ、99%の法定通貨よりも流動性がある場合もあるんです。なぜなら、それは分散型で、誰でも使えるからです。

だから私は、法定通貨を「不誠実」や「不透明」とは呼びません。ただし「アクセシビリティ(参加のしやすさ)」という表現なら、私は納得して使えると思います。

落合: 「検証可能性」や「アクセス性」の観点はとても正確だと思います。人々にとって何が確認できるかが大切ですから。

Meow: まさにその通りです。たとえば農業でも同じですよね。大規模なトラクターを使った農場は誰にでもアクセスできるものではない。でも、小さな庭での農作業は、誰でも参加できます。それがアクセシブルであるということです。

だから私は「誠実/不誠実」というラベルを使いたくないんです。そこには道徳的な決めつけが含まれてしまいます。私は決めつけたくないんです。例えば「クリプトより法定通貨の方が優れている」とは言いたくない。私は押しつけたくない。でも、アクセシビリティは非常に重要な軸だと思います。

落合:「定量的な指標」ですかね。つまり、検証できるものは定量的に扱えて、数学的・工学的にも判断しやすいということですね。

Meow: でも、それは本当でしょうか? 実際に考えてみてください。実は、私たちはあまりよく分かっていない。だからこそ、この話題はとても面白いんです。そしてこれが、私がWeb3ではなく「Web4」と呼ぶべきだと思っている理由の1つでもあります。

Web3には幾つかの構造的な問題があると思っています。たとえば、今のトークンは、世界を良くするためでも、コミュニティを築くためでもなく、単に「ドルを増やすため」に作られているものが多い。

それ自体が悪いとは言いません。 私は決めつけない主義です。ただそれが「世界をクリプトに導く」方法ではないと思っているんです。本来なら「何かを改善したい」という想いからトークンを作るべきなんです。

あるアイデアをを推進したい、あるコミュニティを育てたいというような何かニーズを満たしたい、そういう理由で価値を作るべきなんです。そして、もう1つ重要なのが「新しいスタンダード」を作ることです。

今のところ、多くのプロジェクトは「トークンをどう管理するか」「どう使うか」「どう透明性を持たせるか」を真剣に考えていません。私は、それが問題だと思っています。だから、落合さんが言ったように「透明性が大事だ」という点には完全に同意します。

ただし、現時点では「私たちの業界はより透明だ」と断言するのは難しいとも思います。私たちはその状態を目指さなくてはならない。そして私たち自身も、より透明で、説明責任のある新しいスタンダードやプラットフォームを作ろうとしています。

落合: トークンについてもう少し掘り下げてみたいと思います。判断するつもりはないですが、トークンの分類についてです。トークンにはいくつかユニークなケースがあります。例えば、ミームコインのように、あるミームコインにはプロダクトはないけれど、ただ美徳がある、あるいは美徳のようなものがある。

つまり、私が何かのイデオロギーを唱え、人々がそのイデオロギーが非常に良い、高潔なものだと信じればミームが登場し、皆がそれを信じれば、世界は変わるでしょう。そして、現在、AIは非常に生産的で、コミュニティのメンバーがそのミームコインのために何かをし、プロダクトは後から登場する、といった現象が起こり得るでしょう。つまり、純粋なミームコインは誕生してすぐに崩壊しますが、何かのきっかけで誕生したミームコインは、ミームを生み出します。

Meow: それは何度も生まれてくるってことですよね。

落合: そう、それが面白い現象です。最初は左上の象限(dishonesty・infinity 空想の世界)で生まれ、やがて右下(honesty・finity現実)へ移動していく。そういう現象があると思います。

Meow: それは現象なんかじゃないですよ。宗教をご存じですよね?

落合: はい、日本の神道みたいなものですか?

Meow: そう、宗教。人間は昔からアイデアや象徴を愛してきたんです。いつの時代も。だから「ミームコインにはプロダクトが必要だ」という意見には私は反対です。宗教を考えてみてください。人々は宗教を求めている。アイデアを求めている。象徴を求めている。

そして、象徴には価値がある。たとえば、「イエスの概念」には価値がないと言えるのでしょうか? これから言うことは、ちょっと突飛な考えかもしれませんが……。もし「プロダクト」を「人々が求めるもの」と定義するなら、イエスという概念自体がプロダクトじゃないですか?

落合: プロダクトは、ある意味「文化」ですよね。人々の文化の一部。

Meow: そうです。人々は音楽を求めます。宗教も、安心感も、人々が求める「何か」です。つまり私は、「アイデア自体がプロダクトである」と言いたいのです。そこから他のプロダクト――本や歌、教会など――が生まれる。たとえば「日本」というアイデアも、「アメリカ」というアイデアそうですよ。

だから私が本当に強く伝えたいのは、「アイデアには力がある」ということ。そして、捉え方によってはビットコインもミームなんですよ。

ミームコインというカテゴリに分けること自体、私はちょっと違うと思っています。なぜなら、全てがミームだからです。ビットコインだってミーム。常にそうなんです。つまり、無限の領域に属するものはすべてミームです。

逆に、たとえばこのテーブル、それはミームではありません。これは「実在」していますよね。でも、もし多くの人がこのテーブルを「大好きだ」と思ったら、それはミームになる。つまり、その価値は物質そのものではなく、アイデアに由来しているのです。

だから、今の一般的な考え方――プロダクトは物として存在しなければならないという「工業的な発想」――には私は同意しません。

「価値があるのはソフトウェアだけだ」とか、「価値のあるものは物理的な“もの”であるべきだ」といった考えもありますよね。確かにソフトウェアも“もの”になり得ます。でも、私はそういう考えには賛同しません。

歴史的に見ても、最も価値があったのは常にアイデアなんです。宗教も、国家という概念も、企業という仕組み自体も、すべてアイデアですよね。価値があるものは、すべてアイデアなんです。

なぜなら、アイデアこそが人々を結集させるからです。共通の考えのもとに人々が集まり、何かを一緒に作り出す、創造する。それを可能にするのがアイデアです。

たとえば、今のジュピターもそうです。完全にアイデアから始まっています。もちろんプロダクトもありますよ。でもそのプロダクトは、あくまでそのアイデアを推進するための手段なんです。本気でそう思っています。

もし「イーサリアムはアイデアではない」と考えているなら、それは違います。イーサリアムも完全にアイデアから始まったものです。

私がクリプトの世界で、サトシ・ナカモト以外で最も印象的だったのはイーサリアムですね。完全に、いわゆる「ワールドコンピュータ」というアイデアを本気で押し進めていた。本当に大きなアイデアでした。

そして当然ながら、そのためのソフトウェアもちゃんと作られていた。たとえばギャビン・ウッドをはじめとした多くの開発者が、そのアイデアを支えるためにコードを構築したわけです。

それに比べて、今でも多くの人がビットコインはナンセンスだと言ってます。「ビットコインなんて意味がない」など。何年も前の話ではありますが、当時、トラディショナルファイナンスの人たちや政府関係者の間では、「ビットコイン?誰がそんなもの気にするの?」という反応がほとんどでした。

土地も裏付けもないし、軍事力で支えられているわけでもない。ただのアイデアじゃないかと、そう言われていたんです。

でも、今では私たちは知っています。価値はあるんです。だから私は「ビットコインは一時的な現象だ」という考えには反対なんです。

確かに現象ではありますが、その現象って、実は昔から存在していたものなんです。人間は昔からアイデアを愛してきましたし、アイデアを中心に団結してきたんです。

そして、これこそが私が 「Web4」 で主張している大きなポイントの1つです。クリプトの最も強力なところは、「アイデアをトークンやコインという形にして、現実のものとして存在させられる」という点にあります。

そして私たちが考えるべきなのは、その象徴(=トークン)を使って、自分たちが実現したいことをどう推進していくかということなんです。

イーサリアムがやったことって、まさにそれなんです。イーサリアムはまずアイデアを提示し、多くの人がそのアイデアを信じるようになり、そしてそのアイデアを支えるためのプラットフォームが構築された。

落合: そうですね、Recursively (再帰的に) ですね。

Meow: そう。でも始まりは、あくまでアイデアだったんです。ビットコインでもイーサリアムでも、あるいはジュピターのようなプロジェクトでも、結局のところ「何かを支えるため」に存在しているんです。それが本質なんですよ。そしてこれは本当に大事なことだと思います。

はっきり言うと、私たちはかなり前からプロダクトは持っていました。でも、私たちがリリースしたのは「アイデア」なんです。私たちは、まずアイデアを構築して、それを支えるためにプラットフォームを作ったんです。まさにその順番です。

落合: すごく示唆に富んでいますね。すべてはアイデアから始まっていて、プロダクトは後からついてくるものなんですね。しかも、アイデアとプロダクトが常に1対1で対応しているとは限らない。むしろ、アイデアから文化が生まれて、その文化の一部としてプロダクトが存在する。たとえば、ゴスペル音楽もプロダクトの一種ですよね。ああいう文化から生まれたものもプロダクトだと思います。

Meow: その通りです。だからもっと「プロダクト」という概念を普遍的に捉えたほうがいいと思うんです。アイデアだってプロダクトです。人々が欲するものはすべて、プロダクトだと考えていい。

つまり、そういう意味では、アイデアもトークンもプロダクトです。たとえば、誰かが使っているソフトウェア――ジュピターのようなもの――それもプロダクトなんですよね。

ソフトウェアは当然プロダクトです。だから、この記事を読んでいる皆さんの中で、もしトークンを作っている人がいたら、ぜひ理解しておいてほしいのは、「すべてがプロダクト」だということです。

アイデアも、トークンも、コミュニティも、マーケティングも、価値観も、メッセージも、ソフトウェアも、全部プロダクトの一部です。人とのネットワーキングだって、プロダクトの一部なんですよ。この記事もプロダクトの一部なんです。

落合: ええ、そのフレーミングは非常に革新的ですね。今、AIが非常に生産的になっていて、アイデアを出すこと自体が、そのままプロダクト化していく時代になっていますから。つまり、「アイデア=プロダクト」という考え方は、今の現実に非常に即していると思います。

Meow: 本当にその通りだと思います。たとえば、神道の「プロダクト」って何でしょう? それは「アイデア」なんですよ。そして人々はそこに多くの価値を見出して、実際にお金を払ったりもします。それほどに強力なアイデアなんです。

宗教というのは、本当にものすごいパワーを持っています。なぜなら、それによって多くの人々が団結し、共に何かを成し遂げることができるからです。まさに驚異的な力です。

そして、私はトークンやお金にも、それと同じ性質があると思っています。それもまた、多くの人々を動かし、結びつける力を持っている。信じられないくらいの力です。本当に素晴らしいですし、私はそれが大好きです。

落合: 地方では、毎月神社に集まって何かしらの行事をやっています。人は動きますね。

Meow: えっ、あなた神道なんですか?

落合: はい、そうです。祖母が神道信者だったんです。

Meow: すごい、本当ですか? ありがとうございます。今私が言っていること、伝わっていますよね? つまり、そこにソフトウェアがあるかどうかが本質ではない、ということです。

もしかすると、人々が集まる理由はソフトウェアではないかもしれない。でも、それでもいいんです。みんながその象徴に信じているか、あるいは信じていなくてもそこに関わりたいと思っている。

それって、すごく重要なことなんですよ。たとえば、新しいお金を作るとき――それがビットコインでもイーサでも、SOLでも、新しいミームコインでも――そこにあるのは「アイデア」であって、そのアイデアが人々を結びつけて何かを一緒に生み出す。これこそがプロダクトなんです。

落合: つまりソフトウェアというのは、人間の協調を支える「バックボーン」や「裏側のレイヤー」であって、本質はアイデアと人間のつながりだということですね。

Meow: まさにその通りです。たとえばジュピターもそうです。人々がジュピターを使うのは、参加するためなんですよね。つまり、それも協調の一部なんです。

私の考えでは、本当に大切なのは「その象徴を信じる人たちによって、きちんとコミュニティを築いていくこと」です。信じられている「象徴」こそがプロダクトなんです。本当にすごいことです。私はそういうふうに考えています。そして、先ほどの落合さんの話に戻るんですが、「無限なものと有限なもの」、それから「アクセスできるものとできないもの」――それらの対比が、とても重要なテーマになってくると思います。

次のフェーズは、いわば「陰と陽:の関係になる。つまり、「どうやって良いシステムや枠組み、良いアイデアを構築していくか」、そして「世界中の人々が“無限ゲーム”に参加できるようにするにはどうしたらいいのか」ということです。

興味深いのは、今の世界って基本的に“有限ゲーム”で成り立っているということです。たとえば、法定通貨は有限のシステムですよね。誰もが作れるものではありません。

落合: それってMeowさんのブログに書いてあったPPP(Player pump player)対PVP(Player vs player)の話ですね。

Meow: そうです、その通り。本当に重要な考え方です。私が望んでいるのは、「世界中の誰もが“無限ゲーム”に参加できる状況を作ること」なんです。

これは本当に強調しておきたいんですが、たとえばビットコインが始まった頃やイーサリアムが登場したとき、当時の人々――特にビットコイン至上主義者たちは、「イーサリアムなんてクソだ、他は全部いらない、ビットコインだけでいい!」と言ってましたよね。

でも、よく考えてみてください。もしビットコインしか存在しなかったら、今のビットコインの規模には絶対になっていなかった。断言できます。そんなこと不可能です。

これは本当に重要なポイントです。ビットコイン至上主義者たちは他のすべてを否定していましたが、でも実際には、ビットコインだけでは限界があったんです。

だって、ビットコインだけじゃ供給が足りない(笑)。回らないですよね?

それに、ビットコインがあったからこそドージコインが生まれ、イーサリアムが生まれ、ソラナが出てきて、そしてジュピターのようなものも続いている。すべてはそこから連鎖しているんです。私が今ここにいるのも、ビットコインが存在していたからなんです。

落合さんもビットコインが存在しなければ、今ここにいなかったでしょう? 考えてみてください。あなたはビットコインを持っていますか? 私はビットコインを持ってます。ジュピターのトレジャリー(資産管理)もビットコインを保有しています。

私たちは、世界のことを“有限ゲーム”として考えるように訓練されてきたんです。経済も、学校も、人生そのものも、「有限な競争」に慣れさせられてきた。でも、“無限ゲーム”の考え方はほとんど教えられていません。現実をよく見ると、実際に起きていることはむしろ“無限”なんです。

新しいお金が生まれるたびに、それが次の新しいお金を生み出している。そして、前の通貨の価値が下がるわけではなく、むしろ良くなるんです。イーサリアムに関わっている人たちは、みんなビットコインに感謝していますよね。 競争はあっても、そこには常に感謝の気持ちが絶対あると思います。

落合: そうですね。 私のイメージでは、左下の象限がビジネスや産業の領域で、これは有限ゲームの世界です。一方で、その上の象限は無限ゲームの世界で、そこではイデオロギーやアイデアが絶えず競い合っていて、上限が存在しない。

Meow: それってすごく面白い視点ですよね。私はいつもこう考えてるんです。すべてのお金やトークンは「二重の状態」にあると思っています。

つまり、一方では競争していて、もう一方では助け合っている。これは本当に興味深い現象です。私自身、まだ整理しきれていませんが、明らかに「共生的な競争」が存在していると思っています。「symbiotic competition」という考え方、ご存じですか? 私は「クリプトの世界」って、この「symbiotic competition」という言葉で説明できると思っているんです。

落合: 想像はできます。「効果的利他主義(effective altruism)」みたいなものですか?

Meow: 効果的利他主義? そんなのクソくらえですよ。私はそれを信じてない。本当に。あんなのは戯言です。利他主義なんて信じていません。

落合: 似てる部分もあると思いますけど、違いもありますね。

Meow: 私は全然違うと思っています。また後でこの話をしましょう。今はちょっと違うトピックなので。話を戻しましょう。とにかく「symbiotic competition」というアイデアに戻ると、私たちはみんな、互いに競争しているけれど、同時に助け合っている。その競争こそが、お互いをより良くしている。価値を高めているんです。

たとえば、イーサリアムが良くなったのはビットコインのおかげ。ソラナが成長したのはイーサリアムのおかげ。そして、イーサリアムもソラナから学ぶことでさらに良くなっていくはずです。

そしてソラナは、もっと多くの人々をオンチェーンの世界に導いていくと思っています。想像してみてください。もしこの世にビットコインしか存在しなかったら、もっと多くの人がオンチェーンに来ると思いますか? 絶対に無理です。ありえません。

落合: ですよね、そう思います。

Meow: だからこそ、私は「オンチェーンに人が増えれば増えるほど、それは結果的にビットコインの助けにもなる」と思っています。これが私の考え方です。

だから「symbiotic competition」というアイデアは、非常に強力だと思います。これは、日本語で何て言うんですかね?

落合:「競争的共生(きょうそうてききょうせい)」だと思います。

Meow: きょうそうてききょうせい、競争的共生、いいですね。ハハハハ! これ、僕の好きな日本語になりそうです。

落合: ちょっと難しすぎる日本語ですけどね(笑)

Meow: 大丈夫です(笑)じゃあ、「infinite game」って日本語でどう言うんですか?

落合: 「無限のゲーム」、あるいは「無限の駆け引き(むげんのかけひき)」です。

Meow: ムゲン? ああ、あのアニメの“ムゲン”ですね。M-U-G-E-N。それちょっと難しい(笑)でも覚えたい。すごくかっこいい。うん、うん。こういう言葉が必要なんですよ。「無限のお金」「無限のゲーム」、いいですね。無限マネー!

落合: ちょっと気になることがあって、質問していいですか? 最近AIがすごい進化を遂げていますよね。その中で、「アイデアを信じられるAI」と「新しいアイデアを生み出せるAI」――この2つの方向性は、今の文脈の中で非常に重要だと思うんです。

Meow: そうですね、私はAIはとても重要だと思っていますが、それは多くの人が考えている理由とは違うんです。

私たち人間はですね、成長過程において、ずっと「他の人間ができることを、自分もできるように訓練されてきた」と思うんです。ちょっとバカみたいに聞こえるかもしれませんが(笑)、本当にそうなんです。子供の頃から大人になるまで、私たちは常に「他の人ができること」をできるようにトレーニングされてきました。車の運転、英語の読み書き、会話、数学などなど。なぜそうなのか? それは、それらが「他人ができること」だからなんです。ちょっとバカみたいでしょ?(笑)でも本当なんです。

Meow: では、これってどういう意味かというと、私たちは皆、「他人ができること」をできるように訓練されてきたということなんです。幼少期から大学まで、すべての教育は「他人ができることを、自分もできるようになる」ための訓練なんですよ。

落合: なぜなら、それを教育するシステムがあるからですね。

Meow: まさにそうです。それでは、AIが非常に得意なことって何でしょうか?

落合: すでに人がやっていること…?

Meow: そう、それなんです。AIが最も得意なのは、「みんなができること」なんです。読み書き、要約、情報の処理、分類…全部です。本当にすごいですよ。

つまり、私たちが小さい頃から老年になるまで学んできたすべてのことは、AIの方が圧倒的に上手にやれる、ということなんです。運転でも、文章でも、読解でも、分析でも。

ある時、私はセキュリティのハッキングについて調べていて、「GPTに詳細なレポートを出してくれ」と頼んだんです。改善点、過去の事例、全部まとめて。それで、GPTが返してきたのが……たった10分ですよ。たった10分で完全なレポートが出てきたんです。

ウェブから情報を集めて、構成して、要約して、書き上げて……いや、本当に衝撃でした。10分でそれをできる人間なんて、誰もいませんよ。信じられないですよね?

でも結局、それって全部「人間が訓練によってできるようになったこと」なんですよ。つまり、AIは「皆ができること」をやるのがものすごく得意になる。そして、ここで重要なのは、だからこそ「人間が提供できる価値」は別のところにあるということです。

その価値とは「人間らしくあること」、そして「人間ならではのゲームをすること」、さらには「人間しかできないことをすること」です。

まず第一に、「人間であること」。これはとても重要です。たとえば、嫉妬したり、ワクワクしたり、FOMO(取り残される不安)を感じたり、そういった“感情”こそが人間らしさなんです。もし私たちがそういった非合理な感情を持っていなければ、お金も宗教も存在しなかったでしょう。

そして「人間のゲームをすること」です。たとえば、恋愛したり、デモに参加したり、政治活動したり、世論を作ったり――こういったことはすべて「人間のゲーム:なんです。

で、私のちょっと突飛な仮説なんですが――AIと「Web4」が交差するポイントって、実はとてもシンプルなんですよ。AIは、人間を「より価値創出に集中する存在」に変えていくと思っています。

なぜかというと、これからの時代、普通の人が価値を生み出す方法は、AIの登場によって大きく変わっていくと思っているからです。これはあくまで仮説なんですが、私の考えでは、これから多くの人が価値を生み出す方法は、これまでのような“シンプルな作業”ではなくなるんです。もっと「価値そのものを生み出す」という方向に移っていく。それこそが、大きな変化なんです。

落合: なるほど、なるほど。 一つ、好奇心からの質問なんですが、今のAIを「フェーズ1」だとすると、次に来る「フェーズ2」のAIをどう考えていますか?

たとえば、人型ロボットのようなAIが登場して、契約を結べるようになったら? 賭け事もできるし、トークンの売買もできるようになる。ある意味では、AIエージェントが企業のマネジメントを担うような世界です。株主が「このAIを経営者にしよう」と判断するような時代が来るかもしれません。

Meow: 私は、これには明確に線を引いています。正直に言って、その未来については「知りたくないし、考えたくもない」んです。

なぜなら、私はこの点については少し頑固なんですが――「価値を創造する存在は人間であるべきだ」と強く信じているからです。私たちが目指すべき世界は、「人間が価値を決定し、センスを持ち、アイデアを生み出す存在として残る世界」だと思うんです。人間こそが、常に新しいアイデアの出発点であるべきです。それが、私にとっての目標でもあります。

AIの時代においても、「価値を決定するのは誰か?」という問いの答えが人間であるべきなんです。センスも、アイデアも、価値観も、人間が判断する。それが重要なんです。

たとえAIが企業を運営する時代になったとしても、AIは「実行役」であるべきです。人間は「判断する側」として、その責任を持ち続けなければならない。私はその考えに非常に強くこだわっています。

落合: なぜなら、常に現実には何らかの現象が起こり、それに人間が対応しなければならないからですね。

たとえ「フェーズ2」のAIが登場したとしても、私たちは「フェーズ1」のAIを使って課題を解決するでしょう。これからの社会はますます複雑になります。その中で、常に人間がアイデアを生み、判断し、問題解決していく。それは変わらない役割だと感じます。

Meow: まさにそうです。仮にAIがAIを作るような世界になったとしても、私自身はAIを活用しまくると思います。AIが好きですし、AIの大ファンです。

でも、その力関係は明確でなければいけない。AIは“仕事をする側”であり、人間は“アイデアと価値を決定する側”であるべきなんです。

この役割分担はとても重要です。そしてだからこそ、「無限のマネー」「無限のゲーム」「無限のコミュニティ」という発想が、これからますます大切になってくるんです。

「価値創造のエコシステム」に参加し、AIを効果的に活用できる人間こそが、これから大きな意味を持つようになります。

だから、私からのメッセージとしては、「AIの力を正しく理解すること」、そして「人間の力も同時に理解すること」が何より重要だということです。

最近の議論では、AIの力ばかりが強調されていて、人間の力が軽視されているように感じます。でも、人間も同じくらい強力なんです。このことを、ぜひしっかりと意識してもらいたいと思っています。

Meow: 私、次の言葉が本当に好きなんです。ある人が言ってたんですが、2人の起業家にインタビューしたときの話で――

1人目の起業家は「エンジニアなんてもう必要ない。全部AIに任せるから、全員解雇する」と言いました。でも2人目はこう言ったんです。「なんで人間を切るんだ? AIによってエンジニアの生産性が10倍になるなら、10人雇えば100人分の成果が出せるだろう」と。

私、その2人目の答えに衝撃を受けたんです。心底、感動しました。私は断然2人目の考え方が好きです。

落合: その2人目の起業家は、「無限のスケール」を語ってますね。

Meow: そうなんです。無限のスケールというのは、無限の思考と無限の生産性から生まれます。AIがあれば、私たちは無限の生産性へと向かえる。そして人間がいれば、無限のゲームが成立する。その2つが組み合わさって初めて成り立つんです。

「無限ゲーム × 無限生産性」――これって、すごく面白い考え方ですよね? 私は未来は、きっとこうなると思っています。

「Web4」では、私たちは無限ゲームをプレイすることができる。そしてAIの進化によって、無限の生産性を得られるようになる。

でも、ただ無限の生産性があるだけでは、意味がないんです。

Meow: 無限のゲームがあっても、生産する人がいなければ意味がない。だから私は、これらは2つの次元だと思っています。AIは「無限の生産性」。「Web4」は「無限のゲーム」。この2つが共存する未来は、とても魅力的です。

悲観的な話ばかりの時代に、こういう未来像こそが希望を持たせてくれると思います。

落合: 面白いですね。時間も残りわずかになりましたが、私は、AIには「フェーズ3」もあると考えています。それについてはまた次の機会にお話ししたいです。

Meow: 是非とも。でも今日は本当に楽しかったです。「無限」という考え方、私はとても好きです。無限ゲーム、無限のもの、そして「プロダクトの普遍性」。AIが無限の生産性を担い、人間が無限ゲームをプレイする――未来をこう捉えるのは、すごく楽しいことです。悲観的でもない。

落合: 最近はネガティブな話題ばかりですからね。私たちには「無限のアイデア」が必要です。

Meow: その通りです。これに反するのが、「クリプトはゼロサムゲームだ」という考え方です。これは非常に“有限的”な思考ですよね。 AIがすべての仕事を奪う――そんな極端な未来像を信じている人も多い。でもそれって、とてもつまらないし、ディストピア的な世界です。

それよりも、もっと面白くて前向きな未来があると、私は信じています。

クリプトは無限ゲームの世界。あるプロジェクトが成功すれば、次のプロジェクトの成功にもつながる。実際にそうです。

そして、新しいコミュニティがどんどん生まれてくる。その多くは失敗するかもしれませんが、いくつかは勝ち残り、成長していきます。

そして、AIも“仕事を奪う”ためのものではなく、「無限の生産性」を提供するもの。これこそが、望ましい未来の形だと思います。

落合: みんながそれを信じないといけませんよね。もし信じなければ、すべてが有限ゲーム、ゼロサムの世界になってしまう。だからこそ、無限を信じる必要があるんです。

Meow: 本当にそう思います。AIを「仕事を奪うもの」、お金を「ゼロサム」と捉えてしまえば、人間も社会も、自己防衛的な行動をとるようになります。つまりもしあなた自身や社会全体が「AIは仕事を奪う」「お金は限られた資源」と信じていたら、行動もそうなってしまうんです。そんな考えのもとでAIを使えば、人生そのものも“欠乏”の視点で生きるようになってしまう。

でも、お金や価値創造を「無限のゲーム」として捉え、AIを「無限の活動性」として見ることができれば、世界の見方そのものが変わります。

人を助け、自分自身を高め、自分にしかできないことを探し始めるんです。それが、とても大切な哲学だと私は思っています。――というか、これ、本のタイトルにできそうですね。「無限ゲーム × 無限生産性」って。

落合: 時間が来てしまいましたね。でも、まだまだ話したいです。私の中には常に“無限スケール”があって、いつも無限のことを考えています。でも、だからこそ農業をしているんです。地に足をつけるために。重力が必要なんですよ。さもなければ、私は宇宙に飛んで行ってしまう(笑)。

Meow: 両方あってもいいじゃないですか。私は“両方”が好きです。

エネルギーって、無限ですからね。エネルギーは物質であり、物質はエネルギー。エネルギーって本質的には無限なんです。

でも、あなたの言う通りだと思います。“地に足をつけた具体性”と“無限を志向する心”――この陰と陽のバランスこそが大事なんです。

では、最後に…“Meow”ポーズをしてもらっていいですか?  

よし、いきますね。

2人:今日は本当にありがとうございました。

関連リンク

  • Juputer
  • Meow Blog

取材/編集:設楽悠介(あたらしい経済)
翻訳:野田夢里(Yuri)
写真:堅田ひとみ



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