
「法的枠組みを逸脱する試み」と批判
米国の独立系銀行団体である全米独立銀行協会(ICBA)は、ソニー銀行が米国通貨監督庁(OCC)に申請した信託銀行子会社「コネクティア・トラスト(Connectia Trust, National Association)」の国家信託銀行免許設立の計画に対し、反対意見書を11月6日に提出した。
ソニー銀行は、コネクティア・トラストを通じ、米ドル連動型ステーブルコインの発行、デジタル資産の非受託(non-fiduciary)カストディ、特定の関連会社への受託資産運用などを計画している。
ICBAはこのビジネスモデルについて、「国家信託銀行の法的枠組みを逸脱し、預金類似サービスを連邦預金保険公社(FDIC)の保険なしで提供する試み」と批判。信託銀行が「預金のようなプロダクト」を発行することは消費者に混乱を招き、破綻時の保護も不十分だと指摘し、OCCに対して申請を認可しないよう求めた。
ICBAはまた、国家信託銀行が銀行持株会社法(BHCA)の適用除外となる点を問題視。商業企業であるソニーグループが銀行子会社を持つことで「商業と銀行の分離原則」が損なわれかねないと懸念を示した。
また書簡では、ソニーグループがソニーフィナンシャルグループの約20%を保有し、コネクティア・トラストの取締役5人中3人がソニー銀行、1人がソニーピクチャーズの社員である点が挙げられ、実質的支配の可能性が指摘された。ICBAは、ソニーグループ全体が銀行持株会社としての規制を受けるべきだと主張している。
ICBAはさらに、コネクティア・トラストの申請書の透明性の切除についいても指摘。申請書にはステーブルコイン発行量や準備資産の構成、償還方法などの重要情報が開示されていないと批判し、十分な情報開示なしの審査はOCCの透明性原則に反するとした。
またICBAは、コネクティア・トラストの事業計画が、地域再投資法(CRA)の適用外であることも問題視し、「低所得地域から資金を吸い上げ、地元への融資に還元しない構造になる」と懸念を表明している。
ICBAはOCCの破綻処理能力にも疑義を呈し、「1933年以降、無保険の国家銀行の受託人任命実績がない」などの理由から、コネクティア・トラストが破綻すれば顧客資産が損なわれるリスクがあると警告した。
コネクティア・トラストが、米国で国家銀行免許の申請を行ったことは10月6日付けのOCCの公開資料にて明らかとなった。
この動きの背景には、今年7月に施行されたジーニアス法(GENIUS Act)がある。同法ではステーブルコインの発行や準備資産の管理を行う事業者に対し、連邦規制下での銀行免許取得を義務づけている。これにより民間企業による法定通貨裏付け型トークンの発行が制度的に認められつつある。
10月15日には、米決済大手ストライプ(Stripe)の子会社ブリッジ(Bridge)も同様にOCCに国家信託銀行の設立申請を行ったことが発表されている。
OCCへの国家銀行免許申請は、これまでもコインベース(Coinbase)、パクソス(Paxos)、サークル(Circle)、リップル(Ripple)などが行っており近年その件数が増加している。承認実績としてはアンカレッジ・デジタル(Anchorage Digital Bank)がある。
参考:発表
画像:iStock/ your_photo・Ninja-Studio
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