英国が新ルール草案を発表
英国財務省(HM Treasury)が、同国におけるマネーロンダリング防止(AML)およびテロ資金供与対策(CFT)体制を強化するための規則改正案「2025年資金洗浄及びテロ資金供与(改正及び雑則)規則」を9月2日に公表した。
今回の改革は、暗号資産(仮想通貨)を含む新しい金融サービスに対し規制の抜け穴を塞ぎ、国際的なAML基準と整合させることを目的としている。
草案文書では、「(今回の改正は)金融犯罪に対して強固でありながら、業界にとって運用可能な、よりリスクベースで比例的な規制体制を実現することを目的としている」と述べられている。
規則案では、既存の2017年AML規則を中心に幅広い修正が加えられ、その中には暗号資産取引所やカストディアン・ウォレット事業者に関する新要件が盛り込まれている。
これらの事業者が海外の業者と関係を結ぶ場合、相手先の事業内容やAML体制、監督水準を十分に調査し、上級管理職の承認を得ることが義務付けられるほか、いわゆる「ペーパーカンパニー銀行」との関係は一切禁止される。また、暗号資産移転に関する情報付与義務の金額基準は従来の1000ユーロから800ポンドへと引き下げられるなど、実務レベルでの管理強化も盛り込まれている。
さらに、金融行動監視機構(FCA)は、企業の複雑な所有構造を確実に把握できるよう、現行の「実質的所有者テスト」に代わり、経営陣に対してより広範な「適格性テスト」を導入する予定だ。
また、金融サービス・市場法(FSMA)の枠組みに合わせ、支配権変更通知の閾値をこれまでの25%から10%に引き下げる。これにより、10%以上の株式、あるいは経営に対して重要な影響力を取得した場合、FCAへの通知が義務付けられることになる。
今回の規則案はすでに議会に提出されており、承認後はイングランド、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドで施行される予定だ。施行日は規則ごとに段階的に設定されている。
財務省は、9月30日までこの草案に対するフィードバックを募集している。その後議会での審議を経て、2026年初頭に最終的な規則が施行される見込みだ。
参考:発表
画像:PIXTA
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