
州政府関連機関として全米初の事例に
米ニューハンプシャー州がビットコイン担保の地方債を承認したと、「クリプト・イン・アメリカ(Crypto In America)」が11月19日に報じた。
報道によれば、ニューハンプシャー州の事業金融機関であるビジネス・ファイナンス・オーソリティ(BFA)は、1億ドル(約157億円)規模のビットコイン(BTC ($91,804.00))担保型地方債を11月17日に承認したという。これは米国の州政府関連機関としては初の試みであり、暗号資産(仮想通貨)が既存の債券市場に組み込まれる可能性を示す事例とされている。
今回承認された地方債は、BFAが審査・監督を行うものの、返済リスクは州や納税者が負うわけではない。BFAは橋渡しとして機能し、債券投資家の保全はビットゴー(BitGo)が管理する過剰担保のビットコインによって確保される仕組みだ。
この構造により、企業はビットコインを売却せずに資金を調達でき、課税イベントを回避しつつ流動性を得られる。一方で、投資家は価格変動に応じて発動する清算メカニズムによって保護される。
ニューハンプシャー州は今年5月、州の公的資金の一部をビットコインに投資することを認める「戦略的ビットコイン準備法(HB302)」を全米で初めて制定しており、州財務局は公的資金の最大5%を暗号資産で運用可能になっている。
今回の債券設計には、暗号資産運用会社のウェーブ・デジタル・アセット(Wave Digital Assets)と、地方債に精通するローズモア・マネジメント(Rosemawr Management)が参画している。発行される債券には約160%相当のビットコインが担保として差し入れられ、価格が約130%を下回った場合に自動清算が行われる仕組みとなっている。これにより、借り手はビットコインを手放すことなく資金調達できる点が特徴だ。
BFAのジェームズ・キー=ウォレス(James Key-Wallace)事務局長によれば、債券関連手数料や担保ビットコインの価値増加分は、州内のイノベーションや事業支援を目的とするビットコイン経済開発基金に蓄積されるとのことだ。
また、法務面では大手地方債法律事務所オリック(Orrick)が構造設計を支援しており、同事務所は今回の取り組みを、地方債と暗号資産が交差する画期的な事例だと強調している。
暗号資産を担保にした借り入れはこれまで主に民間レベルで行われてきたが、今回のスキームは米地方債市場での初の事例とされている。
ウェーブ・デジタル・アセットの共同創業者レス・ボーサイ(Les Borsai)氏は、これが単なる一件の取引ではなく、暗号資産が140兆ドル規模の世界債券市場に参入するための扉となると指摘。「このモデルは、デジタル資産の価値を安全かつ規制順守の枠組みの中で引き出し、経済成長に貢献する方法を示すものだ」としている。
またボーサイ氏は、BFAビットコイン担保債券が、暗号資産が伝統的金融と安全に統合し経済成長を促進するモデルだとし、ETFの台頭で機関投資家の関心が高まる中、債券格付けが進めば、年金基金などが慎重に暗号資産エクスポージャーを取り入れるための新たな金融商品が生まれる可能性もあると述べている。
参考:報道
画像:PIXTA
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